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ドル円115を割って思うこと~トランプ大統領の今後について考える~



要約

  • 今年のドル円のレンジは110-125を予想
  • しばらくトランプ相場は続く
  • 2017年末は115円を予想

導入

 以前書いた人民元安を予想する記事を見事に外してしまい、今年は苦しいスタートとなっています笑。投資にあまり関係ない話が増えていた天罰でしょう笑

  なんとなく人民銀行が巨額のドル売りをしてドル円相場を116近辺まで下げた後に115割れするのではないかと思っていましたが、トランプ砲の結果(日本との貿易摩擦について言及)、案の定115割ってしまいました。

 想定の範囲外とは言いませんが、驚いている方もいると思うので、今後の見通しについて今考えていることを述べます。

ドル強気姿勢は変わらず

 今年のドル円のレンジは110-125を予想します。2017年末は今と同じ115円を予想します。

一番恐れていたのはドル高の弊害が経済指標として現れることでしたが、今のところ輸入物価がわずか下がった程度で、PMIが悪化したりは起きていないことには安心感を覚えます。

 また、FRB高官の年3回利上げもトランプ氏の政策影響を大きく受けてはいないという現実にも安心感があります。(当たり前といえば当たり前ですが)実際、米国自体は何もしなくても2回の利上げには耐えれる環境になっているとは思います。

 そこで、アップサイドリスクなのがトランプ大統領の政策です。

ファンダメンタルズ:トランプ大統領に関して

 就任スピーチでは貿易摩擦に関する言及や、外交面の話が目立ったように思われます。特に貿易摩擦について言及した際に、日本と言ってしまいドル円は飛び火を浴びてしまった感じになりました。

 次の会見は20日ということでそれまでは神経質な状況が続くでしょう。しかし、トランプ氏のスピーチ開始5分後くらいで雇用創出を確約しているといってもいい発言をしています。これは、ほぼ完全雇用の米国に対してさらに需要を生み出すことになります。これは確実にインフレは免れないでしょう。

 また、一番の悩みどころはトランプ氏が掲げる強い米国はドル高をどこまで容認するかです。なぜなら、選挙中に低金利派と明言していることや輸出を盛んにしようという考えであることを考えると本来ならドル安を選好するはずなのです。

 実際にここはアナリストの間でも意見が割れています。私が思うに、中国に対して為替操作だなんやといってましたが、基本的には為替相場自体にはあまり興味がないんじゃないでしょうか。

 メインに据えられてるのは貿易収支でそれに悪影響を及ぼすようならば為替の改善を求めるという流れになると思います。そのため、自然な流れとして輸出を阻害させないためのドル高の許容範囲は限られていると思います。とはいえども過去の水準からみてもドル指数105くらいまでは許容されるのではないでしょうか。

円の弱気姿勢

 おそらく市場で、円に関して長期的に強気である人はもうほとんどいないと思います。なぜなら、巨額の赤字国債と2020年にプライマリーバランス0を掲げた一方、財政赤字縮小政策が見られない政府の現状があるからです。

 まして、あろうことか見込み名目GDP成長率を内閣府はかなり強く設定しています。(H28:1.5%, H29 2.5%)*1なぜこれがよくないことかというと、名目GDP成長率を高めに見込むと歳入が増え、国家予算が増えるのです。つまり、国は今後も財政支出を弱める気はないことを意味していると思われます。

 世界的な金融緩和の出口も見えてくれば、日本の金利も上昇するはずで、そうすれば日本の利子負担も増え、財政をひっ迫することを意味します。こういったことがどのタイミングで予見されるかは不明ですが、格付け会社がBBBなどに格付けするのはそう遠くないでしょう。

 このことより、9.11より始まったリスク回避の円買いは間もなく(早くて来年後半)は終了するでしょう。

テクニカル:大統領選後のドル円の動きの速さ

 そこで、少し考えてみたいのですが、なぜあのような急速なドル円の動きがあったのでしょう。ファンダメンタルズの構造は以前記事で紹介した、米国金利の上昇です。

 一方、テクニカルな観点で考えてみると、米国債の売りが主導したことがわかります。人間心理はどうしてもリスクオフ(売り方)の方が敏感です。そして、どの国も国債市場にとっての最大のリスクはインフレの一点なのです。

 インフレが見えている米国にとって、再び債券売りが発生するのは確実だと思います。現行の米国10年債の利回りは約2.4%ですが、長くに渡った金融緩和の終わりが見え、世界経済が正常な状態に戻りつつあることを考えると現行の金利ではやっていけないのではないかと思います。

中国を含む新興国に関して

 やはり、一方での最大のダウンサイドリスクは中国と新興国です。1997年のアジア通貨危機を思い出してみると、アメリカの政策主導のドル高政策が要因でした。

 アジア通貨危機が起きるとまでは言いませんが、中国の対外債務が4兆ドル*2を超えていることを考えると、ドル指数103.5以上に耐えるのは至難の業になるのではないかと思います。このことを考えると3回目の利上げをする頃には確実に、ドル相場が崩壊すると思われるので年末の相場はドル円115くらいだと思われます。

 一方で、ドル建て債務の返済も2015年は1,000億ドル程度進んでおり、中国の経済指標が強さを見せている限りは少し猶予は生まれている可能性はあります。しかし、今後金融引き締めに向かうに当たってまず、中国の問題は出てくるでしょう。

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