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日経平均が高値横ばい状況での株式投資戦略



要約

  • 悪材料の出尽くした割安中型~大型株を買う
  • 割安かどうかは"株価が高値に比べ半分以下",”日経平均下落率の倍程度下がっている”の2つの基準で判断

導入

 イギリスのEU離脱(ブレグジット)を過ぎ、日経平均は6月以前のように再び17,000円の前後で推移し始めました。目先のイベントとしては米国利上げがあるものの、予想外に弱い米国経済指標で日経平均の上値は重い状況です。

 こういった状況下では個人投資家であれば、売り抜けて状況の改善の見通しが立つまで待つのが最良です。しかし、それでも収益を上げたいという場合に取れる、空売りや小型銘柄を買う必要のないシンプルな戦略を解説します。

投資戦略

 今回紹介するのは中型~大型株を使い、空売りを必要としないシンプルな戦略で初心者でもとっつきやすいものです。

 日経平均に限らず、株価指数が高値横ばいの状況下では個別銘柄を選定して投資することで、収益を上げることが往々にしてできます。

どのような個別銘柄を選定するかにおいて株を2種類にわけます。

先行銘柄と出遅れ銘柄

 私がこういった際に考えるのは、以下の2つの株式の区分です。

  1. 先行銘柄...日経平均の動きと共に動く株。いわゆるベータの高い、財務/営業レバレッジがきいた経営をしている銘柄もしくは、注目テーマの銘柄。
  2. 出遅れ銘柄...日経平均の動きをあまり追っていない株。いわゆるベータの低い、財務/営業レバレッジがきいた経営をあまりしていない銘柄もしくは、直近に悪材料が出た銘柄。

 これらの見極めを実際にどうするかは、過去の日経平均と銘柄を比べることで可能です。

 そこで、私が推奨したいのは直近に悪材料が出て、投資家心理が著しく悪く、割安な出遅れ銘柄への投資です。

実際の投資例

 日経225採用銘柄で直近のものを2つ例示します。それは楽天と旭化成です。

旭化成

 悪材料として、2015年にあったマンションの不正工事は記憶に新しいと思います。まずは、チャートを見てみましょう。赤丸が当時日経平均が高値横ばいだった時に株価が上昇した時期です。

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 以上のチャートを見てわかるように、実はマンション不正工事後にも、化学業界の問題として業績の下方修正がありました。その後は日経平均が2度高値横ばいの中、割安であったため、悪材料出尽くしとされ値上がりしています。

楽天

 楽天は海外での事業買収で積み重なったのれんや、主要ビジネスである楽天市場の失速が、市場では2015年に懸念となっていました。では、実際にチャートを見てみましょう。

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 楽天市場の失速は、決算のセグメントから消されたことでほぼ確実となっていましたが、2016年には海外子会社の減損が発表され、欧州事業の見直しも発表されました。その後、日経平均が高値で横ばいながらも株価を20%弱伸ばしています。

悪材料がある中でどう割安か判断するか

 基本的には以下の2つの条件のどちらかに該当すれば、悪材料が出ていた株であっても割安であることが多いと思います。

  1. 高値から50%以上値下がりしている
  2. 日経平均の下降局面で、日経平均の下落率の2倍程度下がっている

 実は旭化成も楽天もそれぞれの高値(1260円, 2395円)から一番安い時に半分くらいになっています。また、楽天の場合、日経平均が20,000円から15,000円まで25%下がったところ、1,700円強から1,000円まで、40%強下落しています。50%とまではいきませんが、十分に基準を満たすほど大幅に値下がりしています。

 また、これらの条件を満たしていれば、悪材料がなくても割安な可能性が高いです。ただし、何が原因で株価下落が起きているかつかめない株は以下の危険性を被る可能性が高くなります。

リスク/注意事項

 この投資をする際のリスクは以下の2つです。

  1. 更に悪材料が出る可能性がある...ファンダメンタルズ分析から起こりうるシナリオについて考えることを推奨
  2. すぐに値を戻さない可能性がある...市場は十分に割安ではないと考えている

 実際にはファンダメンタルズ分析を行ってシナリオを予想するのは、経験がないとなかなか難しいことで、できる人のみ行うとよいでしょう。

 以上の2つのリスクから投資期間、損切ラインを確定してから行う必要があります。また、経験上以下のことを推奨します。

  1. 利益目標を立て、利益目標に近づくにつれ、早めに利益を確定させる
  2. 日経平均が暴落しないと思われる期間が最長の投資期間

 基本的に悪材料で下落した株は損を持っている人が多いです。そのため、いいところまで値を戻すと再び強い売り圧力を受けるため、 

 基本的に日経平均が高値のときに行う戦略であるがために、日経平均自体の暴落が予想される時にはお勧めできない戦略です。すぐに日経平均が下落してしまうと割安株も値が落ちなくても、値を戻すことが困難になります。従って、日経平均が暴落しないと思われる期間が最長の投資期間です。

なぜこの投資がうまくいくか

 実証はないのですが、以下の2つの理由がこの投資を成功させる理由です。

  1. 悪材料が出尽くしていると、これ以上株価が下がることない/下がるにしても小さい(=売り込む人がいない)
  2. 目先だけの状況がいい場合、無理して高値の株を掴むより、安値の株の方が買いやすい(=需要が大きい)

 以上のように基本的には需給を逆手に取っているので短中期の投資戦略です。

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