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トランプ相場の終わりは間近か?~中国株下落は既に始まっている~



要約

  • トランプ相場は中国の元安を発端として年末~年明けに一旦終了する
  • カタリストとして人民銀行の12月外貨準備高(1/7発表)
  • しかし長期的にはリスクオンムードは変わらない

導入

 私は早ければ年内、遅くても年明けにトランプ相場が一旦終わるのではないかと思う根拠を述べたいと思います。

日経平均vs上海指数

 まずは、以下のチャートを見てください。

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 過去1年の日経平均と上海指数を比べてチャートです。今、日本株と中国株は逆行しているのです。

 上のチャートの説明をしますと、青の丸が以前日経平均が上海指数の5%以上の下落に歯向かって上昇したときです。そして、今の状態が赤丸で囲んだ部分です。以下で2つの青丸(過去)と赤丸(今)の説明をします。

過去の日経平均vs中国株

2016年1-2月

 このときは原油価格の続落が中国株を落とし、米国の利上げ期待低下が加わり日本株にも強い売りが出ました。そして、一旦日銀の追加緩和で小康状態となった日本株ですが、中国経済の悪さで再び下落に向かいました。

2016年5-6月

5月の前半で中国株は商品相場とともに下落を見せていますが、日本株は円安で上昇します。6月に入るとブレグジットや、米雇用統計の悪さで大幅下落しました。一方、中国株はブレグジットなどの影響も受けましたが、ドル高が終わり上昇しています。

今の日経平均vs中国株

 ご存知の通り、トランプ相場でドル高が進む中、中国株は元安から下落、日経平均は円安によって上昇しています。これは元安がマイナスに響く中国と円安がプラスに響く日本での違いで起こるべくして起きています。ですが、私は中国株の一定以上の下落は無視できるものではないと思われます。

 11月の中国の外貨準備高が大幅減少したことや、中国当局が1ドル7.35元(現在約6.95元)を割り込めば、大変なことになると声明を出しているのは非常に状態がまずいことの証明です。2015年の連続元切り下げを思い返せば、中国当局が元の切り下げ/人民銀行の外貨準備高のさらなる減少が起きれば短期過熱感が強い相場なだけあって大きな下落は避けられないでしょう。

 中国は多くの不良債権を抱えており、実際に債券の流動性問題が顕在化しており、政府の資金供給なしでは耐えられない状況まで来ています。

2015年末~2016年初との比較

 昨年末は原油価格の下落や、米国利上げの鈍化など多くの悪材料があり、先行きが暗かったのもあり、20%を超える大幅下落が起きました。一方今年はどうかというと、トランプ政策の期待もあり、先行きが明るい中での中国株の下落です。前述のように過熱感も強く昨年ほどとは言いませんが、10%程度の下落は短期的に起きてもおかしくないと考えています。

 また、リスクシナリオとしては上記に加え、中国の不良債権の爆発、トランプ政策の失望(もしくはドル高のマイナス面の顕在化)が起きれば昨年よりも酷い下落になることは間違えないと思います。

追記:米国住宅販売数下落(12/29)について

 コンセンサスが0.5%上昇程度だったところから、-2.0%を下回る中古住宅販売数の下落はドル高期待を一旦巻き戻す展開を起こすでしょう。具体的には、来年の利上げ回数が3回になる前の日経平均18,500、ドル円115あたりもしくは多少下が落ち着きどころになると思われます。

 一時的な調整とは言えども失業率は低いままでトランプ氏の言う財政出動が起きれば、再び金利上昇からドル高に行かざるをいけないでしょう。ポイントとしては米国企業がどこまでドル高を許容できるかが焦点となると思われます。

長期的なトランプ相場

 私は冒頭で、トランプ相場が一旦終わるという書き方をしました。なぜなら長期的には私はトランプ氏の政策も含め、米国内経済の復興は近いと思うからです。なぜなら失業率もかなり低く抑えられており、物価にも徐々に変化がみられてきたからです。従って、短期的なリスクオフには準備をし、価格が落ちたところでリスクを取りに行くことを推奨します。

要点のおさらい

根拠:中国株の下落、加速する元安

カタリスト:1/7発表の人民銀行12月外貨準備高の更なる減少

リスク:中国の不良債権問題の爆発、米国PMIなどドル高による米国企業へのマイナス面の顕在化

備考:長期的には米国主導の世界経済成長は変わらない

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