要約
- JGAAP,IFRS,USGAAPでの違い
導入
現在、会計基準は概ね世界中で同じであるものの、国によって多少異なっています。また、日本企業の一部の企業は日本の会計基準(JGAAP)ではなく、国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(USGAAP)を用いて決算を行うことで海外投資家に対してアピールしようとしています。その結果、企業の会計基準が異なり企業間の単純比較がしにくくなりました。
会計基準
会計基準とは、財務諸表を作成する際に従わなくてはならないルールです。現在主に以下の3の会計基準が存在します。
- JGAAP...日本の会計基準
- USGAAP...米国の会計基準
- IFRS...欧州を始めとした国際基準
日本の会計基準は米国の会計基準をを参考に作られているため、似ていることが多いですが、IFRSとは違いがいくつかあります。そこで、本ページでは日本で主に用いられている3つの会計基準の主要な差異を財務諸表の書類ごとに紹介します。ここに記載がない場合は原則差異がない、もしくは投資判断に影響がないということです。
貸借対照表
名称
JGAAP/USGAAPとIFRSでは書類の名称と固定資産の呼び方に以下のような違いがあります。
項目の順番
JGAAP/USGAAPでは流動性の高い順に上から記載することがルールとなっている一方、IFRSでは順番は規定されていません。また、そのためIFRSでは項目を流動、非流動に分けず記載していることもあります。
例えば、JGAAP/USGAAPでは短期借入金を長期借入金別に記載するところ、IFRSでは借入金とのみ記載している場合があります。流動非流動を区別せず、財政状態計算書に記載している場合、後に注記で流動、非流動の内訳を記載しています。
棚卸資産
USGAAPのみ、LIFOの使用を認めています。また、IFRSのみ、低価法による評価減の戻し入れを当初の評価減までを限度に認めています。
固定資産
減価償却
IFRSでは毎期減価償却の方法を見直し、変更をすることが可能です。一方、JGAAP/USGAAPでは正当な理由がない限りは不可能です。また、のれんはJGAAPのみ減価償却可能です。
減損
IFRSのみ、のれん以外の減損は戻し入れ可能としています。損益計算書上ではJGAAPでは特別損失、USGAAPではその他の費用、IFRSでは営業費用に記載されます。※以下の損益計算書の項目参照
損益計算書
項目の違い
損益計算書では項目に違いが見られます。JGAAPを基準に違いを一覧にしたのが以下の表にです。
JGAAPにない項目について解説します。
持ち分法(による)投資利益はJGAAPでは営業外収益に含まれていましたが、USGAAP、IFRSでは独立項目として記載されています。
非継続継続事業からの(非支配持分控除前)純利益というのは当期もしくは来期中に中止もしくは売却される事業からの利益を指します。IFRS、USGAAPでは今後も続く継続事業と取りやめが決まっている非継続事業とを明確に分けて損益計算書上で区分しています。
IFRSの金融収益・費用は利息の受け取り、支払いにかかわる費用でJGAAPでは営業外収益/費用だったものが独立した項目です。
営業利益
大きくJGAAPから異なるのはIFRSの営業利益の考え方です。IFRSでは金融収支を除いたJGAAPにおけるその他の営業利益/費用も営業利益に含まれます。
このことから、IFRS採用企業とJGAAP/USGAAPの営業利益を比較する場合は調整をする必要があります。個人的にはIFRSをJGAAP/USGAAPの営業利益に合わすほうが良いと考えています。その際はその他の収益・費用を差し引くことで完了します。
経常利益
この項目はJGAAP特有の項目で、IFRS、USGAAPにはありません。
細かい点ではこれら以外にも差がありますが、投資判断に大きくかかわるのはこの程度だと考えられます。
特別利益/損益
IFRSではこの項目の記載は一切認められていません。
参考書
更に知りたい方向けにいくつか会計基準やそれらの差異に関して書かれた本があるので紹介します。
日本の会計基準に関して解説をしている本です。
日本の会計基準とIFRSへのコンバージョンを意識して書かれた本です。
米国の会計基準に関して解説をしている本です。
若干内容がそれますが、財務会計自体を解説する名著です。