要約
- EVA = NOPAT(純税後利益)-資本コスト
- DCFより想定しなくてはならない項目が減るメリットがある
導入
企業価値の手法にEVA(Economic Value Added)という方法があります。EPA(Economic Profit Analysis)、Excess Return modelと呼ばれることもあります。この手法では、DCF程多くの項目を想定しなくても企業価値を測ることができるため、個人投資家向けの手法であると考えています。
- 要約
- 導入
- EVA(経済付加価値, Economic Value Added®)
- EVAで企業価値を算定する構造
- EVAの注意点
- EVAによるバリュエーションの4つファクター
- MVA(市場付加価値、Market Value added)
EVA(経済付加価値, Economic Value Added®)
EVA®とは、投下資本の資本コストを上回る超過リターンを指します。つまり、以下の図のようになります。
WACCについてはこちらのページ参照。DCFと違い、EVAは簿価を基準として考えるため、WACCの計算は簿価ベースで行われます。
また、計算式で表すと以下のようになります。
更に、ROICのR(利益)をNOPATとすれば以下の式が成り立ちます。
個々での投下資本=有利子負債+株主資本は簿価で計算されます。
EVAで企業価値を算定する構造
先ほどEVAの定義から、EVAは投下資本に対し、超過利益を生み出すかを示します。従って、投下資本(簿価)にEVAの現在価値を加えることで企業価値を測定することができます。つまり、以下の図のように計算することで企業価値を測定できます。
以上の構造に従ってEVAを用いた本源的時価総額(株価)は以下の式で算出されます。
DCF同様、残存価値を用いることでEVAの予想期間を限定することができます。一般的に3-5年後から残存価値にすることがほとんどです。
また、冒頭で述べたように、EVAでは運転資本の増減、純投資を考慮する必要がなく、事業用資産の範囲を定めなくていいことからDCFより手間が少ないのが特徴です。
この特徴から、金融機関、事業を多角化させている企業のバリュエーションに強みがあります。(DCFで金融機関のバリュエーションをするのは実質不可能です)
EVAの注意点
将来においての資本コストは将来時点でその都度計算する必要があることです。なぜなら、EVAが正であれば通常、将来における投下資本が増加することからです。
EVAによるバリュエーションの4つファクター
EVAを簡単に示せば、先ほど紹介した以下の式になります。
従って、EVAでの企業評価においての変動要因は以下の4つに分けられます。DCF同様、EVAの精度を高めるには以下の4つのファクターに対し感応度分析を行うことが必要です。
- ROIC
- WACC
- 投下資本
- EVAが正/負となる期間
特に判断が難しいのが4番です。例えば、EVAが正であれば、株主資本は増加するため翌年度の投下資が増加し、資本コストは増加します。
従って、企業が永遠に成長し続けることはないため、どんな企業もいつかEVA=0に収斂せざるを得ないのです。このことから、残存価値におけるEVAの成長率はマイナスである方が自然なバリュエーションになるでしょう。
MVA(市場付加価値、Market Value added)
MVAとはEVAの内、すでに市場で評価されている額のことを指します。つまり、MVA、EVA、企業価値の関係は以下の図のようになります。
上記の図の例ではEVAがMVAを上回っているため、株価が本源的企業価値に収斂すれば今投資をすることでEVA-MVA分儲かります。逆に上記の例と違い、EVAがMVAを下回れば売りとなります。