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損益計算書重要項目一覧



要約

  • 損益計算書重要項目一覧
  • 企業の業績分析において最重要書類

導入

 前のページでは貸借対照表の重要項目について扱いました。今回は損益計算書の重要項目を一覧にして紹介します。企業の業績分析において肝となる書類です。

 貸借対照表に比べ、基本的な項目でここにないものは少ないです。貸借対照表同様、ここにない項目で金額の小さい項目は無視しても構いません。

損益計算書の基本構造

 損益計算書の大きな構造は事業(非金融)会社であれば大体同じです。一方、金融事業を行っている会社の損益計算書は少し変わります。売上高が経常収益などに置き換わります。

 損益計算書の主要項目を図で表すと以下のようになります。

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 それぞれの項目を以下で解説します。

売上高/原価と5つの利益

 売上高と4つの利益は上の図にも解説がある通りシンプルなものですが、売上原価を加え少しだけ解説を加えます。

  1. 売上高...企業の製品/サービスの販売/提供から得られた利益。業界用語でトップラインとも呼ばれる。対してボトムラインは最終利益のことで、純利益、包括利益、フリーキャッシュフローが該当。
  2. 売上原価...企業の製品/サービスの販売/提供の原材料、部品となったものを取得するのにかかった費用。
  3. 売上総利益...粗利。売上高-売上原価。粗利率に関しての分析はこちら。
  4. 営業利益...企業が純粋にビジネスをすることから得た利益。売上総利益-販管費。
  5. 経常利益...企業が操業したことで得られた全ての利益のうち、一時的な影響を除外した利益。
  6. 純利益...最終的に企業が期中に稼いだ利益。詳しくはページ下部の純利益の項目参照。
  7. 包括利益...純利益に、純資産の評価変動によって生まれた損益を加えた最終利益。(上記の図では省いています)

 どの利益も、損失になってしまった場合、損失と名称が変わります。つまり、純利益から純損失などになります。

次に、それ以外の項目について紹介します。

営業と営業外の基準

 一般的に、本業のビジネスを営業、それ以外を営業外とします。つまり、製造業であれば、製品の販売からの利益が営業利益で、それ以外の金銭の貸付や有価証券への投資からの利益は営業外利益となります。

 簡便化すれば、会社の事業概要や事業説明のページに書いてあるもの以外の収益/費用が営業外利益/費用となります。

トリッキーなのは会社の資本として有利子負債があるとき、利息払いがあります。会社の操業には必要ですが、本業自体から出てくる費用ではないため、有利子負債の利息払いは営業外費用となります。また、事業が多角化していれば、多角化したビジネスは全て本業になります。

販売費及び一般的管理費(販管費)

企業の操業自体にかかったコストです。借入利息の支払いなどの金融コストはここでは含まれません。細かい費用の内訳は書かれていないこともあります。 

 販管費が低く、安定している企業ほどコストコントロールができているとみなせます。主に販管費に含まれるのは以下のものです。

  1. 販促費関係...製品の販売を行うのにかかった費用。広告宣伝費、荷造運搬費、代理店手数料、販売奨励金などが該当。販売奨励金とは販売員が契約を成立させた際に与える成功報酬(インセンティブ)のことです。
  2. 人件費関係...社員、役員に対する給料。給料、賞与、福利厚生費などが該当。
  3. 管理費関係...企業の操業にかかわる費用。通信費、家賃、保険料、貸倒引当金繰入等が該当。
  4. 減価償却費...固定資産の経年劣化による価値低減を費用化したもの。詳しくは会計基準のページ参照
  5. 研究開発費...研究開発に関わった人件費、原材料費、減価償却費で構成される費用。研究開発とは全く新しい製品の開発もしくは既存商品の著しい改良を指します。基本的に損益計算書ではなく注記に載っています。

営業外収益

 貸し付けや有価証券への投資などビジネス以外から得た収益。以下が主な項目です。

  1. 受取利息/配当金...保有する債権、株式から得た利息/配当金
  2. 持分法による投資利益...持分法に適応される程度株式を保有する企業の利益の内、企業に繰入れられる利益。詳しくは注記のページ参照
  3. 投資有価証券売却益....保有していた投資有価証券を売却することで得た利益。特別利益に入ることもある。
  4. 為替差益...外貨建の債務、債権を持っていた場合に為替変動によって円での価値が増減することで得た利益。

営業外費用

主に投資からの損失や、借入れに対する利子支払いや自己株式取得手数料等、資金調達にかかる費用。以下が主な項目です。

  1. 支払利息...借入に対して支払った利息。社債の利息払いならば社債利息になります。
  2. 自己株式取得費用...自己株式を取得した際にかかった手数料などの費用。株式の購入額は費用には入りません。
  3. 有価証券売却/評価損...保有有価証券の価値が著しく下がることによる損失。特別損失に入ることもある。
  4. 棚卸資産評価損...製品、半製品、原材料の時価が著しく低下した場合に出る損失。特別損失に入ることもある。
  5. 為替差損...為替差益の損失版。

特別利益/損失

 特別利益/損失に分類されるためには以下の2つの条件を満たさなくてはなりません。

  1. 発生が稀であること...原則、予測できる将来において再発性がない
  2. 企業が通常にビジネスを行って起きないこと

 基本的には営業外利益/費用に入るもので再現性がなければ、特別利益/損失に入ります。

 一方、本業とされる営業利益までに入る項目に対しては災害など、企業が原因ではないものや、リコールなどビジネス上常日頃起きないことも特別損失に入ります。ただし、頻繁に起きる場合は営業外損失になることもあります。

 以下が特別利益/損失の例になります。

特別利益
  1. 固定資産売却益...不動産や機械などの売却によって得られた利益。
  2. 投資有価証券売却益...投資有価証券の売却によって得られた利益。
  3. 貸倒引当金戻入額...売掛金が準備した貸倒引当金ほど回収不能にならなかった場合に、引当金を利益とすること。
  4. 国庫補助金収入...国からの助成金を受けることで得た利益。
特別損失
  1. 固定資産関係...固定資産除却/廃棄/売却損が該当。固定資産を処分した際の損。
  2. 有価証券関係...投資有価証券売却損、子/関係会社株式売却損、有価証券強制低価評価損が該当。有価証券の売却、評価損にかかわる損。
  3. 減損損失...資産が著しく価値が低下した際の損。減損については会計基準のページ参照

法人税等合計

 かかった税金の総額です。基本的には法定税率が企業に課せられますが、様々な要因で法定税率と異なる額の税金を払うことになります。注記に詳しい税金のかかり方を記載している企業もあります。

純利益

 最終的な実際の利益額で、株主の利益です。もし子会社で、企業が議決権を全て保有していない場合には以下の2種類の純利益が掲載されます。

  1. 非支配株主に帰属する純利益...議決権(普通株式)を全て保有していない子会社の利益の内、他の株主に帰属する利益。
  2. 親会社株主に帰属する純利益...最終的な企業(企業の株主)の純利益。

 端的に言うと非支配株主に帰属する純利益とは、連結財務諸表を作るにあたり、水増しされてしまった利益を引くための項目です。

 会社の支配権は一般的に議決権(普通株式)を過半数持っていると得ることができ、連結財務諸表を作るときに連結対象となります。しかし、例えば60%しか子会社の株を保有していないと、残りの40%の株を持つ株主たちとも純利益を分配しなくてはいけません。この40%の株を持つ株主に渡す純利益が非支配株主に帰属する純利益となります。

包括利益計算書

 これは資本取引以外による純資産の変動による利益(その他の包括利益)を純利益に足した包括利益を計算するための書類です。その他の包括利益は主に有価証券の評価損益、為替損益などによって生まれます。純利益と同様に包括利益もボトムライン(最終利益)の分析に用いられます。

 次のページではキャッシュフロー計算書の重要項目を紹介します。

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