要約
- 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、注記を見て投資判断をする
- キャッシュフロー計算書は損益計算書と貸借対照表をつなぐ役割を果たす
導入
個別企業に投資をしようと思うと、避けられないのは会計知識の習得です。財務分析/経営分析には必須の項目です。実はそんなに知るべきことは多くなく、今回から株式投資に必要な会計知識を最短ルートで学べるように紹介します。
基本的に日本の会計基準/会計原則を使って説明していきます。国際会計基準のIFRSや米国会計基準との差はこちらのページで紹介しています。
- 要約
- 導入
- 財務諸表/決算書について
- 貸借対照表(財政状況計算書、バランスシート、BS)
- 損益計算書(純損益計算書、インカムステートメント、PL)
- キャッシュフロー計算書(CF)
- 注記
- 財務分析の手法
財務諸表/決算書について
財務諸表の役割
企業は事業報告を株主に報告するため、四半期に一度四半期報告書、年度末に有価証券報告書を公開しています。その中に掲載されている財務諸表で、業績や財務状況を報告しています。
実際に、以下がトヨタの有価証券報告書の目次です。赤丸でくくったところに財務諸表が掲載されています。
連結財務諸表とは、子会社も合算した企業の財務諸表で、通常、連結財務諸表をみて株式の分析を行います。つまり、トヨタだけではなく、トヨタの部品製造の子会社や、トヨタの米国の子会社などまで含まれます。一方、上の例での財務諸表は企業単体であり、子会社を含めないトヨタ本体だけの業績、財務状況を提出するものです。
財務諸表に含まれる書類
まず、決算書/財務諸表の見方/読み方を知るにはどんなことが書かれているのか、どんな書類があるのかを知る必要があります。財務諸表にこの財務諸表には、以下の図のように概ね5つの書類が含まれています。
このうち、投資で使うのは基本的に貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3表と注記です。この4つのみ解説します。
また、会計基準が違うと書類の名前が変わってきます。日本企業の主な会計基準は日本(JGAAP)、米国(US-GAAP)、ヨーロッパ(IFRS)の3つです。それぞれの呼ばれ方は以下の表に基本的に従います。日本と米国は同じ呼び方であることが多いです。
貸借対照表(財政状況計算書、バランスシート、BS)
貸借対照表は決算日の会社の財政状況について報告します。つまり、決算日が6/30であれば、6/30の会社の財政状態を報告します。貸借対照表は主に3つのパーツでできています。
- 資産...会社が資金調達、もしくは会社利益によって得た資金をどのような形(現金、在庫、土地、機械...etc)に変わっているかの内訳
- 負債...会社が元本返済義務のある、借金の形で調達した資金の内訳(社債、借入..etc)
- 純資産...会社が元本返済義務のない、株式の形で調達した資金と、会社が上げた利益のうち、株主に直接還元しなかった利益の内訳
以上の図のように、基本的には負債もしくは株主資本の形で得た資金を資産に変え、資産を使って企業はビジネスをしています。そのため、必ず資産=負債+株主資本の式が成立します。簡単な貸借対照表の例を下に記載します。
より詳しく知りたい方はこちらのページで。
損益計算書(純損益計算書、インカムステートメント、PL)
損益計算書は決算日までの四半期もしくは一年を通じて上げた売上、利益などの業績を報告します。つまり四半期報告書の決算日が6/30であれば、4/1-6/30の間の業績を報告します。下に簡単な損益計算書の図と例を示します。
財務分析にあたって中心的な役割を担う書類です。
より詳しく知りたい方はこちらのページで。
キャッシュフロー計算書(CF)
キャッシュフロー計算書は決算日までの四半期もしくは一年を通じての企業の現金の流れについて報告します。つまり、企業がどうやって現金を手にし、どこに現金を使用したのかを明らかにします。例えば四半期報告書の決算日が6/30であれば、4/1-6/30の間のキャッシュフローを報告します。キャッシュフローには以下の2つの役割があります。
- 現金の実際の流れを把握する
- 損益計算書と貸借対照表を結ぶ
会計上、実質的な業績を示すため現金の移動(キャッシュフロー)を伴わなくても、損益を損益計算書や貸借対照表に反映させることがあります。一方、投資においてはキャッシュフローが重要です。そこで、キャッシュフロー計算書を用いて、実際の現金の移動が公開されています。
従って、キャッシュフロー計算書は損益を現金移動の観点から整理し、期首と期末の現金残高の変動を説明します。つまり、キャッシュフロー計算書は、以下のように損益計算書と貸借対照表を結ぶ役割があります。
キャッシュフロー計算書は以下の3つの大きな項目で構成されています。
- 営業活動によるキャッシュフロー...企業の操業によって生まれた収益、コストによる現金の流れ
- 投資活動によるキャッシュフロー...企業の投資によって生まれた収益、コストによる現金の流れ
- 財務活動によるキャッシュフロー...企業の資金調達によって発生した資本増減による現金の流れ
これはつまり、企業がビジネスをすると上の3種類のお金の動きがあることを示します。
以下が簡単なキャッシュフロー計算書の例です。
より詳しく知りたい方はこちらのページで。
注記
注記には、財務諸表を作る上で重要な細かい項目、会計基準などが記載れています。非常に重要な情報が眠っている可能性が高い項目です。以下が注記に載っている項目の例です。
- 会計方針に関わること...重要な会計方針や会計方針の変更について記載があります。
- セグメント情報...企業の地域別、事業別の業績が記載されています。
- 財務諸表のより細かい項目...販管費の内訳や、法人税の内訳などの各項目のより細かい内容が記載されています。
より詳しく知りたい方はこちらのページで。
財務分析の手法
各書類についてわかれば、残るは分析方法です。どのような経営指標/財務指標があるのか、それらの計算方法は以下の2つのページに記載しています。
これらのページは財務分析にあたって基礎となる、デュポン分析(デュポン式)をベースとして経営効率、収益力、財務状況を分析する手法を紹介しています。