要約
- フリーキャッシュフローとは使途が限定されていないキャッシュフロー
- EBITとは企業の継続的な利益
- キャッシュフローにはFCFFとFCFEの2種類が存在
導入
前回は企業価値をどのように測ることができるかを解説しました。今回は投資に必要な本源的企業価値を測るための基礎となるフリーキャッシュフローについて解説します。
フリーキャッシュフローを計算するためのサンプルのエクセルファイルをこちらからダウンロードできます。
- 要約
- 導入
- フリーキャッシュフロー(FCF)
- EBIT(Earnings Before Interest and Taxes)
- 企業へのフリーキャッシュフロー(FCFF, Free Cash Flow to the Firm)
- 株主に帰属するフリーキャッシュフロー(FCFE, Free Cash Flow to Equity)
- 参考書
フリーキャッシュフロー(FCF)
企業の事業価値の源泉となるのがフリーキャッシュフローです。フリーキャッシュフローとは、企業が生み出したキャッシュフローのうち、使途が限定されていないキャッシュフローのことを言います。
フリーキャッシュフローはキャッシュフロー計算書に記載されていないため、自ら計算する必要があります。詳しいフリーキャッシュフローの計算方法は次のページで紹介します。簡便的にはフリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフローとされてますが、企業価値評価においては不正確であるため用いません。
以下の図のようにFCFを求めていきます。
EBIT(Earnings Before Interest and Taxes)
EBITとは企業の継続的な利益を測る指標です。フリーキャッシュフローの計算はEBITを元に行います。一般的には以下の計算式で求められます。
以上のように、どこを起点にするかで3通りの算出方法があります。
金融費用は支払利息を含めた株式発行費用など財務活動にかかった費用を指します。また、純利益を起点とする場合は一旦税前純利益に直してから計算する必要があります。
企業へのフリーキャッシュフロー(FCFF, Free Cash Flow to the Firm)
FCFFとは企業へのフリーキャッシュフローです。FCFFを企業の資本構成に応じた割引率(WACC)で現在価値に直すことで企業価値の事業価値を算出できます。一般的に言うFCFはこれを指します。
FCFFの計算式は以下のようになります。
やや長い式ですが、項目ごとに説明します。
- EBIT×(100%-法人税率)...EBITから税金額を引いています。
- 設備投資-減価償却費...純投資と呼ばれます。設備投資とは新たな固定資産を購入額です。通常決算書の"設備の状況"に記載されています。一方、減価償却は保有資産の劣化に伴う費用です。現金移動を伴わないためキャッシュフロー計算書の記載額を差し戻します。
- 運転資本増分...増加した運転資本。事業に必要な資産として新たに組み込む額は、企業が自由に使えるキャッシュではないため引きます。
図にすると以下のようになります。
株主に帰属するフリーキャッシュフロー(FCFE, Free Cash Flow to Equity)
FCFEとはFCFFと違い企業ではなく、株主に帰属するフリーキャッシュフローです。FCFEを企業の株式の割引率で現在価値に直すことで企業の株式の本源的価値を算出できます。
これを計算式は以下のようになります。
項目別に説明を加えます。
- 支払利息×(100%-法人税率)...これは税効果を除き、実際に払わなくてはならない支払利息です。支払利息は債務者のためのキャッシュフローであるため引きます。
- 有利子負債増分...今期新しく負債の形で資金調達したキャッシュです。新規借入/社債発行額-借入返済/社債償還で計算されます。
次のページでは実際にキャッシュフローを用いて企業価値、事業価値を算定する方法を紹介します。
参考書
合わせて2冊業界本を紹介します。どちらも全2巻です。
投資における業界本です。海外名門のMBAなどでも投資の教科書として使われており、グローバルで読まれている本です。
- 作者: ツヴィ・ボディー,アレックス・ケイン,アラン・J・マーカス,平木多賀人,伊藤彰敏,竹澤直哉,山崎亮,辻本臣哉
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/03/26
- メディア: 単行本
こちらもコーポレートファイナンスにおける業界本です。インベストメント同様海外でも広く読まれています。インベストメントより理論重視の本です。