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円高にも強い株式投資~金融株による疑似金利トレーディング~



要約

  • 金利上昇によって円高でも金融(銀行/保険)株は儲かる

導入

 今回は金融業界の株式の特徴について紹介します。結論から言えば、金融業界の株を使うと金利(国債)を擬似的にトレーディングすることが可能です。そのため、円高局面にも強い株です。

 とはいえども、個人投資家には国債や金利のトレーディングはなじみが薄いと思われます。そこで今回は、金利トレーディングのメリットもあわせて紹介したいと思います。トランプ相場も落ち着いてきて円安の天井も見えてる時にこそ活かされる戦略です。

金融業界の収益構造(ビジネスモデル)

今回特に紹介するのは金融の中でも銀行、保険に関してです。この2つの株は一般に金利上昇(債券価格下落)が起きると株価が上がります。そこでなぜ、株価が上がるのか収益構造の面から紹介します。

 銀行や保険会社の基本的なシステムは以下の図の通りです。

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 基本的に銀行も保険会社も資金を集め、その資金を使って投資することで収益を上げています。そして、収益の源である投資先は債券がほとんどであることから、金利上昇が上昇すると収益が増え、株価が上がります。従ってタイトルの通り、国債金利上昇により金利差の縮小で円高に振れても株価上昇が期待できます。

 念のため一旦、銀行、保険の収益構造を説明します。(上の説明で分かった方は飛ばしてください)

 銀行は預金者から預金を集め、一方で企業への融資、もしくは国債などの債券に投資しています。その際、預金者には低金利を支払い、資産運用では預金者に払う金利より高い金利を得て収益を上げます。

 また、保険の場合は保険加入者から受け取った保険料を資産運用し、保険支払い料よりも高いリターンを得ることで収益を上げます。

特に以下の式ようになることを順ざやといい、企業が儲かることを示します。(逆になることは逆ザヤといい損を生みます)

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円高と金融株の関係

 以下の記事で紹介した、トランポノミクスによるサイクルは一巡し始めていると考えられます。

www.life-in-investment.com

  以上の記事で説明していた主導していた米国金利の上昇は行き過ぎとの観測も強まっており、限界が近いです。一方で米国金利(正しくは円安)につられ、日本の金利は上昇を始めています。すると長期金利差は今度縮小に向かい円高に振れる懸念が高いと考えられます。

 このような状況下では上記のように、日本の金利上昇に恩恵を受ける、金融株が相対的に強くなります。

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 更に細かく言えば、金利上昇でも、長期~超長期金利が上昇した際には保険株がより上昇し、それ以外のときには銀行株の方が上昇します。これは、保険の方が期間の長い債券を持っているためです。

 今回は債券自体については言及しませんでしたが、債券市場自体に関してより知りたい方は日本の債券業界におけるバイブルであるこちらの本を参考にするとよいと思います。

 

なぜ日本の金利上昇が言えるか

 この戦略の肝となる前提は、日本の金利上昇が続くことです。米国の金利上昇で始まった日本金利の上昇はなぜ止まらないのでしょうか?それには以下の理由があります。

  1. 米国金利の低下はない...米国金利の上昇はあっても低下は考えづらいです。なぜならば米国の物価上昇は始まっており、失業率も低く、トランプ大統領の政策がどうであれ、米国はインフレに向かいます。そんな中で金利低下が起きる可能性は低いからです。(このことから円安も十分考えられますが天井は見えています。)
  2. 原油価格の上昇...OPEC減産を受けて原油価格は$50を戻しました。これは円安と合わせ輸入物価を引き上げる要因にもなり、国内のデフレ脱却も視野に入ってきます。
  3. 赤字国債...政府は1.6兆円の赤字国債の発行を考えている模様で、債券の供給が増えることで債券価格低下(金利上昇)が起きます。
  4. 日銀のYCCターゲット変更...今の円安や原油安が国内物価上昇に現れてくればYCCのターゲットも変わっていくでしょう。

いくつかの銘柄

 こういった状況から、外需株(輸出企業)に限らず、金融株を買うのもよい戦略だと思います。以下にいくつかの今回の銘柄を紹介します。

  1. あおぞら銀行(地方銀行)
  2. 三菱東京UFJ(都市銀行)
  3. 第一生命HD(生命保険)
  4. 東京海上HD(損害保険)

 また、今回は触れませんでしたが、原油系の株の上昇もまだ続くと思われます。個人的なトップピックは米国で株価が急騰したNVIDIAの下請けも行うシリコンウエハーメーカーのSUMCOです。 

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