要約
- ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析が証券分析の2大流派
- テクニカル分析はチャートや証券価格から需給の分析を行う
- テクニカル分析の強みは1.手間がかからず売買のタイミングを決められること 2.商品を問わず使えること
導入
証券の分析には以下の2つの大きな流派があります。以前株価変動の原因はニュースにあると紹介した際と同じ分け方です。
- ファンダメンタルズ分析...証券の発行体の経済状況を理論価格を分析する手法
- テクニカル分析...主に証券の価格チャートから将来の値動き(需給)を分析する手法
今回はこの2番目のテクニカル分析について扱いたいと思います。テクニカル分析がその有効性について疑問視されていることもありますが、実際に日本に限らず、証券取引の本場米国でも多くのプロの投資家が用いており、その有効性は明らかです。なぜなら市場での価格はコンセンサスと呼ばれる、市場参加者の多数が納得する価格がつくからです。つまり、みんなが使っている手法であれば、それがコンセンサスを作っているからです。
一方で、テクニカル分析はファンダメンタルズ分析と違い、あくまで需給の傾向を表すだけで、必ず正しいとは限りません。また、巷ではかなり多くのテクニカル分析手法が語られていますが、個人投資家に向いていると思われるものはごく一部だと思われます。そのため、本トピックでは個人投資家向けに有効なテクニカル分析をまとめました。
今回の記事は前提理論的なことが主となるため、実際のテクニカル分析の仕方に飛びたい方は次の記事から読むことをお勧めします。
事前準備
先ほどテクニカル分析では、主に価格チャートを用いるという話をしました。そのため、価格チャートの読み方を知らない方はこちらの記事を一読してください。(今回の記事ではチャートはありませんが、次回から出てきます。)
テクニカル分析そのものについて
テクニカル分析で使う2+1の情報
テクニカル分析では主にチャートを使うといいましたが、実際にはチャートに描画されている以下の3つの数値を使います。
- 価格...証券の取引価格
- 出来高...ある証券の取引量
- 未決済建玉...先物のみ使われ、市場に流通している先物の契約量
また、主にチャートをテクニカル分析で使う理由は、チャートには過去の値動き、つまり過去の投資家の心理や予想が詰まっているとされるからです。
テクニカル分析が基づいている3つの前提
テクニカル分析において重要な3つの前提が以下のものです。
- 市場で決定されている価格は、全ての価格に影響を及ぼす情報を織り込む...市場に流れたニュースはその影響を価格が織り込むということ
- 値動きにはトレンドが存在する...一定の期間値動きは、上昇下降横ばいのいずれかの向きに動く傾向を持つということ(ランダムウォークの否定)
- 歴史は繰り返す...過去の値動きは将来の値動きに影響を与えるということ
1番は先ほど述べたように、チャートには投資家の心理や予想、全ての情報が詰まっているとする前提です。
2番では、ランダムウォーク理論と呼ばれる、証券の値動きは一定の方向を持たず、予測不可能であるといった理論を否定するものです。実際に、2013年のノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー氏は短期的な証券価格の予想は不可能だとしても、中長期では予想可能であるとしています。
3番はファンダメンタルズ分析にも共通する前提です。おそらくファンダメンタルズ分析に限らず多くの人文学はこれを前提としてます。これを否定しようと思うと一回起きたことが二度と起きないという、検証が必要ですが、永遠にできないため受け入れてよいとしましょう。
テクニカル分析の強み/弱み
最後にテクニカル分析の強みと弱みです。まず2つの強みから見てみましょう。
- 手間をかけず売買のタイミングを決定できる...チャート上で上限に達すれば売り、下限にくれば買いと単純に決断できる
- 商品を問わず適用可能...チャートのみを使うため、チャートがあればどんな商品でも適用可能
特に、強調したいのは2番の強みです。テクニカル分析は株式市場で生まれた分析の方法ですが、実は先物市場、FXなど幅広い商品で適用可能なことが分かっています。つまり、商品自体の知識が完全になくてもある程度の価格予想はテクニカル分析によってわかります。実際には、多少テクニカル分析の仕方が商品ごとの性質によって異なるため注意は必要です。
次に一般的に言われている2つの弱みです。
- チャート分析はかなり主観的である...自分の取りたい行動に結論がよってしまう。
- 過去の動きが将来の予測に使えるのか実証不可能
実は、これらはファンダメンタルズ分析においても言える弱点です。1番は感情によって動く人間の弱みだとも言え、2番は人文学の限界だとも言えます。特に、分析をするに当たって1番のようなことが起きるということに注意が不可欠です。なぜならテクニカル分析は特に主観的な判断が入りやすいからです。
テクニカル分析自体について押さえたところで、次から使えるテクニカル分析の手法について1つずつ解説していきます。