投資の世界に生きる

プロ投資家として投資の基礎を発信


株の値動きを掴むための2大基礎理論:ファンダメンタルズ編



要約

  • 全ての売買されている商品は需要と供給の不均衡で価格が変わる
  • ニュースに1.ファンダメンタルズ 2.需給の2種類がある

導入

 今回は株価指数がなぜ動くのかという主な要因について説明していきます。なぜ株価が動くかを把握し、自分の予想を立て株価の方向を定めれば投資ができるようになります。

 今回扱う、株価指数(日経平均/TOPIX)の変動は株式のみならず、為替などほかの市場にも影響を与えます。これは逆もまた然りですが、株をメインの取引に考えてない方にも有用な記事だと思います。また、個別株の上がり下がりは高確率で株価指数の動きと一致します。そのため、個別株でうまく投資するには株価指数の相場観/変動要因を把握しておくことが大切です。

株価変動唯一の直接的要因

 株価を動かす唯一の直接的な要因は需要と供給の不均衡にあります。これは株のみならず、債券や為替など金融商品からリンゴやたまごなど、売買されるものすべてに当てはまります。  株の場合、今の値段で株を買いたい/売りたくないと思う人が増えると株価が上がります。

 このように、多数の人の株の売買の動機づけとなるのがニュースです。誰でもニュース関係なしに、調査が終わったから買おうということもありますが、それでは大きく需給の均衡を変えないため株価が大きくは動きません。ですが、多くの投資家が一斉に動くのはニュースが出た直後です。では、この株価を動かすニュースにどのようなものがあるか見てみましょう。

2種類のニュース

 株式市場に関わってきた経験から、株価を動かすニュースは2種類に分類できます。それは、1. ファンダメンタルズに関するニュース 2. 需給に関するニュースの2つです。これらが投資家の株価予想、心理に影響を及ぼすことで株価が動きます。今回は1についてのみ扱います。

 特にファンダメンタルズに関するニュースは発表のスケジュールが決まっているものが多く、市場では予想が立てられています。この予想をコンセンサスといい、これに対しニュースが上回るか下回るかして株価が上下します。

ファンダメンタルズに関するニュース

 まず、ファンダメンタルズという用語について説明します。ファンダメンタルズとは国や企業の経済状況そのものを指します。つまり、国であれば経済成長率とそれに影響を及ぼす財政状況、インフレ率で、企業であれば企業業績にかかわる売上や、資産構成などを指します。ざっくりとした言葉で明確な定義はありませんが、野村証券のサイトでは実際に指標の例も挙げられています。

ファンダメンタルズに関するニュースの種類

 次にファンダメンタルズに関するニュースで株価指数を動かすのはどのようなものか紹介します。どのニュースも経済成長を促進するか否かがポイントとなります。

  1. GDPに関するニュース...GDPの発表、機械受注、鉱工業生産、国際収支、景気動向指数などが該当。
  2. 物価に関するニュース...消費者/企業物価指数、消費動向などが該当。
  3. 雇用状況に関するニュース...有効求人倍率、賃金、失業率などが該当。
  4. 規制に関するニュース...法律、税金などの各種規制。規制緩和や自由貿易化などが該当。
  5. 経済政策に関するニュース...政府の経済政策。マニフェストや補正予算などが該当。
  6. 金融政策に関するニュース...中央銀行(日本は日銀)の政策。政策金利、マネタリーベースなどが該当
  7. 災害、テロなど突発的なニュース...震災、テロや為替介入などが該当。

 以上がファンダメンタルズに関する主なニュースです。どのニュースも必ずしも良ければ株価が上がるというわけではないのでトリッキーですが、2,3カ月市場を追っていると、どのようにニュースが出ると株価がどのように反応するかわかるようになります。 

経済成長が促される仕組み

 ではどのように上で挙げたニュースが、互いに影響を及ぼしているか図を使って説明したいと思います。 

f:id:eve93:20160812161042p:plain

 これは株価上昇の時の図で、矢印の順に影響が及ぼされます。どこ始まりかは場合によります。図だけではわかりづらいところを追加で説明をしたいと思います。

円安の影響

 まず、円安がなぜ物価上昇、企業業績向上につながるかです。日本では、消費財や原料の多くを輸入しているため物価上昇につながり、大企業は多く製品の輸出を行うため業績向上が起きます。

物価の影響

 まず、物価について説明します。円安が起きると価海外からの輸入品の値段が上がります。なぜなら現地では値段が上がっていなくても日本円に直すと値段が上がるからです。例えば$1で輸入できるバナナがあるとします。もともとの為替レートが1=¥100だとします。ここから円安(円の価値低下)が起き、1=¥110になってしまうとします。すると、バナナがドルでの値段が変わらなくても円では¥100から¥110になっています。これが多くの商品で起きると物価上昇が起きます。

 次に企業業績の向上です。先ほど述べたように大企業の多くは輸出を行っており、売上の多くが海外から来ています。そうすると円安は2つの点で業績を上げます。1つ目は単純に売ったものの値段を円に換算したとき、円では額が上がるからです。(先ほどの輸入の逆です。)2つ目は現地での製品の値段を値下げすることで価格競争力がつくということです。単純に考えると、現地通貨で値下げをしても、値下げ幅が円安幅を超えなければ製品一個から得られる利益は維持できます。その一方で安くなった分、売ることの個数が増えれば業績が上がるということです。以上をまとめると、一個当たりの売り上げが上がる、もしくは一個当たりの利益を保ったままより多くの個数製品を売れるということになります。

 次に、物価上昇がなぜ企業業績を上げることになるかというと2通りの考え方があります。1つは物の値段が上がるため、売上が増加するという単純な考え方です。2つ目は物の値段が上がるということは、需要が供給を超えている=本当はもっと製品が売れるという考え方です。ここは比較的直観的にわかる部分かと思います。

政策金利の経済への影響

では、政策金利低下が及ぼす影響を説明します。まず、政策金利を引き下げると銀行は貸出をしやすくなります。なぜなら銀行の基本的なビジネスモデルが以下の図ようになっているからです。

f:id:eve93:20160812164923p:plain

 簡単に言うと預金者から低い利子で集めたお金を債券や企業への貸し出しという形でリスクを抑えつつ高い金利を得ているのです。つまり政策金利=国債の金利を下げると銀行の業績に悪影響があります。そこで銀行は貸出を増やし、預金の利息を下げることでこの問題を悪影響を打ち消します。このとき、銀行は貸出を行う際に、企業に求める金利を下げることで貸し出しを増やすのです。

 金利が下がると、企業はビジネスの拡大のために借り入れを行うことが容易になり、企業が投資をし、業績を向上させることができます。そうすると企業はビジネス拡大のために人を雇います。すると新規の雇用が創出される、もしくは失業率が低い場合、賃金を上げることで既に働いている人に転職を促します。その結果、働いている人に金銭的余裕が生まれ消費が生まれるという理論です。

経済成長が止まる/経済が後退する仕組み

 先ほど経済成長が促される仕組みでしたが次は逆のパターンを見てみましょう。

f:id:eve93:20160812170114p:plain

 簡単に言えば先ほどの逆が全てにおいて起こります。基本的にはこれが経済後退の仕組みではあるのですが、なぜこの仕組みに陥ってしまうのかという疑問があると思います。

 また、今回扱ったような経済の仕組みはケインズ経済学に基づいたマクロ経済という学問を通して紐解けます。

 ファンダメンタルズのニュースに関して理解したところで、次は需給のニュースについてはテクニカル編で扱います。

investall.hatenadiary.jp

≪前のページ