要約
- ダウ理論はテクニカル分析の起源となった理論
- 株価はすべての情報を織り込んでおり、過去の株価チャートを見ることで将来の値動きを予測できる
- 上下2つのトレンドの方向があり、その期間は3つに分かれている
- トレンドを確定させるには株価の他に出来高もトレンドを示す必要がある
- トレンドは逆転のサインがない限り続くと考えられる
導入
最も古いテクニカル分析の理論の1つで、現代のテクニカル分析の起源はこの理論にあります。ダウ理論のダウというのは、今でも米国の有名な株式指数のダウ平均(Dow 30 Index)の算出を行うダウジョーンズ社の創業者、チャールズダウのことです。
あくまで株価に対して立てられた理論のため、株価が中心となって話が進みますが、FXなどほかの商品でも適用可能です。また、古過ぎる理論のため新しい理論の方がより有用ですが、より発展したテクニカル分析を理解するために導入としてダウ理論を扱います。
ダウ理論
株価の平均は株価に影響を与える情報を全て織り込んでいる
ダウ理論では、株式市場全体としては株価に影響を及ぼす情報をすべて織り込んでいるとしています。つまり、例を挙げれば、日本株であれば日経平均/TOPIX、米国株であればDJI30/S&P500は全ての情報を織り込んでいるとしています。これはテクニカル分析自体の解説で扱った、前提とほぼ同一です。
マーケットには3つのトレンドの期間がある
ダウ理論では株価の一方向的な動き(トレンド)が2種類存在し、トレンドの期間はついて3つあると定義しています。まずは、ダウがどのように一方向的な動き(トレンド)を定義したか見てみましょう。
- アップトレンド(ブル/上昇)...高値、安値ともに連続して前回の高値、安値を上回る
- ダウントレンド(ベア/下落)...高値、安値ともに連続して前回の高値、安値を下回る
実際に2014年から2015年にかけての週足の日経平均チャートで見ると青色で丸を付けたところがアップトレンド、黄色で丸をつけたところがダウントレンドとなります。この例で分かる通り、前回のローソクより高値安値が連続して上/下回っていれば成立します。この定義を厳密に使う必要はなく、概ね上、下に動いていればそのトレンドだと掴んでいいです。なぜなら、近年特に株価は過剰に動きすぎた結果、高値、安値いずれかが不一致することがあるためです。
ちなみに、ブル/ベアというのは業界の用語で上昇/下降トレンドのことを言います。
次にダウ理論のトレンドの3つの期間を見てみましょう。
- 主要トレンド:1年以上で数年まで
- 中トレンド:主要トレンドの中で三週間から三カ月、1/3 - 2/3程度主要トレンドの動きを調整
- 小トレンド:中トレンドの中で三週間以下、中トレンドの中での変動
このようにそれぞれ期間設定が行われていますが、主要トレンドは半年程度のものもあり、中トレンドと小トレンドはもっと長い期間があることも多いというのが実感です。それをまとめると以下のようになります。
個人的な経験で分けるならば以下のようになります。
また日経平均2014年から2016年にかけての日経平均で見てみると以下のようになります。小トレンドは日足でしか確認できないため見えづらいですが、実際に中トレンドが、主要トレンドで14,500円から2,1000円に上がった日経平均を17,000円あたりまで値上がり分に対し約60%程度戻しています。
また、日足で確認すれば小トレンドも確認できます。
トレンドの3つのフェーズ
ダウ理論は主要トレンドにおいて3つのフェーズがあると考えています。
- 資本蓄積フェーズ...機敏な投資家だけが資本投下をするフェーズ
- 大衆参加フェーズ...投資家達の間で話題になり、急に株価が動くフェーズ
- 情報通達フェーズ...マスメディアや情報ベンダーから情報発信され、ほとんどの人が情報を既に知っていて株価の動きが鈍るフェーズ
株価が動くのは主に2のフェーズで1,2ではあまり動きません。実際に2012年以降の日経平均を見てみるとこうなります。
トレンドとみなすための条件
先ほど紹介した、アップ/ダウントレンドの定義を満たしていても、トレンドとしてみなせないことがあります。そこでダウ理論ではトレンドとみなすために2つの条件を提示しています
- 株価指数同士が同じトレンドを示している必要がある...例えばTOPIXと日経平均が同じトレンドを示さなくてはならないとしています。同時にトレンドを示し始めなくてもよいとしていますが、そのタイムラグが短ければ短いほど強いトレンドを示します。
- 出来高がトレンドを示す必要がある...株価がトレンドの方向に動くとき、出来高も増えなくてはならいないとしています。つまり、アップトレンドでは株価が上がるときに出来高が高く、株価が下がるときに出来高が小さくなる必要があります。
では実際にこの2つを確かめてみましょう。これは2013年末から2014年の日経平均の動きです。左の赤色の円では一旦ブルトレンドが終了し、右の黄色の円でブルトレンドが戻ってきています。赤の円では株価上昇が起きても出来高が増えておらず、株価が下がった時の方が出来高が多いことが分かります。一方黄色の円では株価が上がるときの方が出来高が大きいことが分かります。
また、下の図は先ほどの赤丸で示した2014年冒頭にブルトレンドが終わるところのTOPIXと日経平均を比較したものです。日経平均は株価が最初に下がったとき以降、株価が頂上に来る前のローソクまで出来高増えてるのに対し、TOPIXは一足先に出来高が減っていたことが確認できます。
トレンドは逆転のサインがない限り続く
ダウ理論に限らず、トレンドを探しながら株取引をするにあたって最も難しいのがトレンドがいつ変わってしまうかを見極めることです。ダウ理論ではトレンドは逆転のサインがない限り続くと定義しています。では、トレンドの逆転をどのように見つければいいのでしょうか?
これは2013年から2016年半ばにかけての日経平均の日足チャートです。
まず、青の矢印ではブルトレンドが始まり、黄色の矢印ではブルトレンドが終わり、ベアトレンドに入りました。まず黄色の線から説明したいと思います。
黄色の線は直近三回下がったときの大体の底値を示しています。そして、黄色の矢印で示している点で、株価は大きな出来高を伴いながら過去三回の底値を、突き破りました。このときにトレンドの逆転が発生しました。このようにベアトレンドへ変わるときは直近の底値を、ブルトレンドに変わるときは直近の上値を大きな出来高を伴い破ることが相場逆転の証です。実際に底値を破ったのちに底値を超えて戻ってきていますが、出来高が小さく、元のベアトレンドへと戻ってしましました。
では、青の矢印ではどうでしょう?同じように大きな出来高を伴いながら直近の上値を破っています。そのため、ここではブルトレンドが始まったと見なせたのでした。
しかし、その前の相場を説明することがダウ理論ではできません。これがダウ理論が古すぎる理由で、現在のテクニカル分析はダウ理論から進化しています。その進化したテクニカル分析の理論を次の記事で紹介します。