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わかりやすい証券価格チャートの使い方



要約

  • ローソク足チャート+対数スケールを使いこなすことが投資で成功するコツ
  • チャートは基本日足で使う

導入

 株など金融商品の取引では必ず見ることになるチャートといったものが存在します。チャート自体には何個か種類があるのですが、チャートを見ることで過去にどのように価格が推移してきたかわかります。また、このチャートを使って証券商品の分析をすることをテクニカル分析と呼び、世界中でテクニカル分析が行われています。テクニカル分析のページはこちら

 以下が日経平均のチャートの例です。これはローソク足チャートという種類のもので、今世界で最も有名なチャートの1つです。実はこのチャートは日本人が発明したもので、海外ではJapanese Candle Stick(日本式ローソク)と正式には呼ばれます。

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 上のチャートで13-week MAとなっている線がありますが、これは移動平均線と呼ばれるもので先ほどのテクニカル分析のページで紹介します

価格の種類

 上で述べたようにチャートとは過去の価格の推移を表すものです。そのため、過去の価格を見る上で、4種類の価格を紹介します。いきなり価格の種類自体を見ても何のことかわかりづらいと思うので、後の3大チャート種類のチャートも参照して下さい。

  1. 始値(はじめね)...ある期間の中で最初についた価格
  2. 終値(おわりね)...ある期間の中で最後についた価格
  3. 高値(たかね)...ある期間の中で一番高くついた価格
  4. 安値(やすね)...ある期間の中で一番安くついた価格

 これらを合わせて4本値(よんほんね)と呼び、チャートの描画にそれぞれ使われます。基本的には漢字そのままの意味です。この記事に限らず、金融のニュースでは頻繁に出てきます。ちなみに、夕方以降のニュースで言われる日経平均の値段はその日の終値を使っています。

 これら以外にもIPO後、最初についた値段を初値(はつね)と呼びます。また、最近ではVWAP(Volume Weighted Average Price、出来高加重平均)という出来高に合わせて平均価格を割り出した値段も普及しています。

3大チャート種類

 現在でもよく使われているチャートを中心に紹介します。

ローソク足(Candle stick)

 国内外問わず、最も使われているチャートの一つです。特徴としては2色で表されているため見やすく、4本値全ての情報が集約されています。実際に外資系の証券会社のトレーダーから資産運用会社のファンドマネージャーの多くがこの種類のチャートを使っています。このチャートを使いこなすのが金融商品での投資で成功する第一歩と言っても過言ではないでしょう。先ほどの例のものですが、もう一度載せておきます。

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 この四角から線が出ている図形は2色存在します。白と青、赤と緑、赤と黒など様々なパターンがあります。これらは終値が始値より高い「陽線」と終値が始値より低い「陰線」で色分けされています。システムによって色分けが違うのでシステムごとに色分け方法の確認が必要です。図にすると以下のようになります。

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 上下から出た、安値/高値を示す細い線を"ヒゲ"と呼びます。以上のように描画するため、安値/高値が始値と終値の間に収まった場合は、ヒゲは描画されません。

折れ線チャート(Line chart)

 これもローソク足チャート同様世界中で最も有名なチャートの一種です。特徴としては、終値を直線で結んで描画されているチャートということです。ローソク足に比べ情報量が減り見やすい一方で、必要以上に情報が削減されているのも事実です。以下のチャートの青い線が先ほどのローソク足チャートを折れ線チャートで表したものです。

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バーチャート(Bar chart)

  これは主に海外で使われているチャートです。最近はローソク足に置き換わりつつありますが、まだたまに見ます。特徴としては4本値が必ず全て描画されていることです。下の画像はアメリカ版日経平均ともいえるS&P500という米国の株価指数のバーチャートです。

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 少し見づらいかもしれませんが、一本一本は以下のように描画されています。

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それ以外のチャート

 これら以外はあまり見ることはないため紹介は省きますが、ポイントアンドフィギュアチャートという×と○で描画されたチャートもあります。

出来高

 また、価格とは別に描画される数値の中で重要なもので出来高というものがあります。テクニカル分析をするにあたり株価と同等に出来高は重要です。出来高とはその商品が何株(枚)取引されたかという値で、通常価格チャートの下に棒グラフで描画されます。下の画像はトヨタのローソク足チャートですが、その下のグラフで示されているのが出来高です。一番多い日では3千万株(30×1,000,000)が売買されていることを示しています。

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チャートの描画期間

 次にチャートを見るうえで大事なのがチャートの描画期間です。チャートの描画期間は2つあり、「チャート全体でいつからいつまでの価格推移を示しているか」と「チャートを描くにあたり、どの期間での4本値を使っているか」です。前者は簡単で、通常チャートの下に日付が記載されています。先ほどのトヨタの例ならば2014年8月末から2年間です。後者はパッと見でなんとなくわかりますがやや複雑なので解説します。

4本値の期間

 先ほど4本値はある期間でのそれぞれの値だと言いました。実は、4本値の期間は様々あり、期間によって「(期間)+足(あし)」と呼びます。代表的なものは日足(ひあし)、週足(しゅうあし)等です。それぞれ、一日での4本値、カレンダー上の一週間(祝日が入れば日数は減る)での4本値を用いています。つまり、週足のローソク足チャートであれば一週間での4本値を使い、折れ線チャートでは一週間の終値を使います。

 通常半年以内であれば日足のチャートであることが多く、それ以上では週足を使うことが多くなります。また、日足か週足かはチャート描画の際に設定できることが多いです。

 また、より短期間であれば1分足なども存在します。これよりさらに短いのがティックと言って売買が成立するたびに、その売買価格を使って描画します。ティックでは4本値が存在せず、その時々の価格を使うので点を描画することになります。

どの足を使うか?

 基本的に日足、短期売買であればより短い期間のもので使うことを推奨します。ただし、日足で過去1年の株価などしか確認できないのであれば週足、月足も確認することが必要です。何故なら、最近の株価で見たら安いが長い目で見たら高いやその逆ということはよくあるからです。詳しいことはテクニカル分析の記事で確認してください。

チャートのスケール

 日本ではあまり活用されてないように思われますが、実はチャートのスケールも大事です。チャートのスケールとは「縦軸に価格をとった際に、縦軸をどのような間隔にするか」のことです。まずは例を見てみましょう。先ほどのトヨタのチャートのスケールを変えたものと元のものを横に並べました。

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 左のチャートに比べて右は下から上に行くほど幅が狭まっているのがわかると思います。

 スケールには2種類あり、標準(linear、線形)と対数(logarithmic)があります。前者の標準スケールは価格の差で幅が固定されています。左のチャートを見ればわかりますが、1000円はどこでも同じ幅となっています。ちなみに、なぜだか日本では標準チャートという呼び方が多いですが、線形スケールと呼ぶほうが正確です。

対数スケール

 一方で後者の対数スケールでは、変化の割合が同じ幅になっています。小難しく聞こえるので例で考えてみましょう。実は、右のチャートで「4,000円から6,000円の幅」と「6,000円から9,000円の幅」は一緒なのです。何故なら、6,000 ÷ 4,000 =1.5、9,000 ÷ 6,000 =1.5 と変化の割合(1,5 - 1 = 0.5 = 50%)が同じだからです。そのため、価格の幅は2,000円と3,000円と一致しませんが、変化の割合が同じなため、幅は同じ長さになります。数学の知見がある方用には、対数スケールでは対数で差を一定の幅に固定していると説明すると早いです。

どちらのスケールを使うか

 基本的に対数スケールを使うことを勧めます。何故なら証券投資では収益を割合(%)で測ることがほとんどだからです。資産規模によって稼げる絶対額が変わるため、投資効率を示す割合で比べる方が比較が正確であることから、割合で投資収益を測ることが慣習化しています。

 また、線形スケールばかり見ていると特に高値圏での値動きを過大評価してしまいがちです。上のトヨタの例でも2015年1月以降に7,000円後半から9,000円に乗せた値動きが線形スケールだと大きく見えますが、対数スケールで見ると、その前に6,000円から8,000円に乗せたタイミングと比べ大分投資効率が悪いことに気付きます。また、高値圏での値動きに勢いがなくなってることにも気づけます。

 一方、線形スケールが役立つのは高値圏での値動きが続いていたりするときに価格の推移幅(レンジ)をつかむのには便利です。何故なら対数スケールだと高値圏の値動きは潰れてしまい見えづらいからです。

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