要約
- クリティカルファクターのモニタリングを定期的に行う
- 新しい情報がクリティカルファクターかどうかはチャートを使って参照。
導入
前回クリティカルファクター/カタリストの見つけ方について記事を書きました。クリティカルファクターは時間が流れるにつれ、変わってしまうため、常に新しい情報がクリティカルファクターになりうるか確認が必要です。
※ちなみに、クリティカルファクター/カタリストは証券に限らず、市場で価格決定される全てのものの価格変動に必要な要因です。
クリティカルファクターのモニタリング
まず、特定したクリティカルファクターのモニタリングを行いましょう。クリティカルファクターごとに以下の2点を定期的に調査またはチェックしましょう。
- クリティカルファクターに関わる問題
- カタリストとなりうる出来事
例えば、人件費がクリティカルファクターになるのであれば
- 翌期の雇用契約の上昇率
- 労働組合との交渉結果の公表
となります。せっかく見つけ出したクリティカルファクターで、気づいたら市場に先を越されてたなんてことがないように定期的に点検することを推奨します。
新しく出てくるクリティカルファクターに対する対処
ほぼ毎日ニュースが上がってくるため、新しいクリティカルファクターが生まれることは当然です。ただし、新しいニュースがクリティカルファクターかどうか判断かしなくてはいけません。参考文献の著者ジェームズ氏は以下のフローチャートをクリティカルファクターの選別方法として紹介しています。実は、以下のチャートは投資期間内かどうかを無視することで過去のクリティカルファクターを探すときにも使えます。
上のチャートで出てくるリスクプロファイルとは、企業が持つリスクのことを言います。つまり、リスクプロファイルの変更とは、新しいビジネスを大規模に始めるやターゲットとする市場を大幅に変更したときに主に発生します。例えば、日本電産、ロームが車載市場に大きくシフトしたことが例となります。*2*3
以上のフローチャートで中央列のいずれかに該当すれば、クリティカルファクターになります。一見大変な作業に思われますが、このチャートで引っかからない情報はすべて無視することができるので、情報に惑わされづらくなります。
以上のチャートに当てはまる例
財務関連はきちんと調査していないと気づけない例が多い一方、財務以外について簡単にわかることが多いです。実際に、例を見てみましょう。
経営陣の変更による例は意外と多く見られます。これはほとんど予測不可能なことですが、影響が出た際には大きくなることもありうると認識しておきましょう。記憶新しいものであれば、創業者の復帰で株価が暴落したクックパッド*4、海外でもナンバー2社長就任で株価上昇があった大手航空会社のユナイテッド航空*5などがあります。
また、企業の買収被買収に関しても稀にあります。こちらは業界や企業のことをよく研究していれば、見抜けることも多いです。マイナス金利による銀行再編劇に巻き込まれ買収される十八銀行*6、買収まで行かなくても議決権取得争いとなった大塚家具*7があります。一方大株主による株売却も存在し、東芝関連で、東芝に株を売却される東芝プラント*8があります。
ここまでで、定性分析は一旦終了となります。以前紹介したチェックリストの項目、業界調査を押さえた上で、クリティカルファクターまで完璧に把握すれば完全な定性と言えるでしょう。
また、定量分析の手法にや実際の定性分析の方法についてはいずれ紹介したいと思います。
*1:James, V. (2011). Best Practices for Equity Research Analysts: Essentials for Buy-Side and Sell-Side Analysts p113 Exhibit 8.4を参考に作成
*2:日本電産、売上1兆円突破の原動力は“社運をかけて”取り組んだ新事業 永守社長は「通過点」と豪語|ビジネス+IT
*3:インタビュー:自動車の売上高比率、3割に増加へ=ローム社長 | ロイター
*4:ホットストック:COOKPADが大幅安、創業者が2日で執行役に復帰 | ロイター
*5:米ユナイテッドが大幅高-アメリカン航空ナンバー2の社長起用を好感 - Bloomberg