投資の世界に生きる

プロ投資家として投資の基礎を発信


株式調査を成功させるためのチェックリスト



要約

  • 成功する株式調査には最低の満たすべき要件がある
  • 情報収集は株価に影響があるもののみに限定
  • 基本はプロでもネットを使い情報収集

導入

 前回ファンダメンタルズ分析の目標とそれの理解に必要な証券の価格決定プロセスについて紹介しました。今回から株式調査の手法について扱います。株式調査を始めるにあたり、最初に集めなくてはならない情報をまとめています。

成功する株式調査に共通すること

 ファンダメンタルズ分析はテクニカル分析に比べ、分析するポイントが煩雑になりがちで手間がかかります。そのため、まず分析を成功させる上で何をするべきかリストの形式で把握しましょう。

  1. 調査対象企業の製品やサービスとそれらの主要市場に影響を及ぼす要素を完全に理解する
  2. マーケットのコンセンサスと自分の見立てが違う点に集中して論理を立てる
  3. 調査対象企業の戦略が、競合の戦略とどう違うのか的確に説明できるようにする
  4. 適正価格が現在の価格と十分違う場合、何の前提や見方が違うのかを明確にする
  5. 最低でも過去十年間のバリュエーションの上限、下限を把握する

 以上がしっかり行われていれば、ちゃんとした企業分析ができてると言えます。一方で、完全にすべての情報を掴むことはできないということを理解して、取得可能な情報のみで作業を進めることが重要です。

集めるべき情報

 次に、ファンダメンタルズ分析において集めるべき情報です。ここでのポイントは2つです。

  1. 株価を動かす要因となりうる情報だけに集中する...全ての情報を集めることが必用ではないため、必要な情報にのみ集中しましょう。
  2. 業界の調査を優先する...個別企業がどんなビジネスをしているか分かれば、先に業界の調査を行うことで広い視野での調査が可能です。

 以上のことで分かるように、業界と企業両方の情報を集める、作成する必要があります。では、それぞれどのような情報が必要か見てみましょう。

業界の集めるべき情報
  1. 売上に関わること...需要、成長率、ビジネスチャンス
  2. 費用に関わること...ビジネスをする上での主要なコスト、規制
  3. リスク...業界全体に共通するリスク、商品を代替されるもしくは新規参入の脅威
  4. M&A...業界再編の情報
  5. 業界の人の情報源...業界で働く人がどのような情報に仕入れているか把握する

  1に関わることは深く掘っていくとたくさん出てきます。株式の業績予想はまず、売上の予想を立て、そこに利益率を考えて..と立てることが一般的です。そのため、売上に対する分析にはなるべく多く時間をかける必要があります。よく使われる手法は売上を要素に分解して分析する方法です。一般的に下のように分解されます。

f:id:eve93:20160828224110p:plain

 特に、4に関しては何のために行うのかというのが疑問に湧くと思いますが、業界の流れだけではなく、M&Aの理由や狙いを調べると業界でポイントになっていることが自然と浮かび上がってきます。

 また、5に関しては業界の人がどのように意思決定をしているのかを理解するうえで重要です。コストがかかってしまいますが、有益な情報も多いので試してみることをお勧めします。

 実際に、簡単な例で考えてみましょう。自動車業界を例に使って簡単に考えます。

  1. 各国での新車販売数推移(成長率)、自動車普及率(需要)、モデルチェンジのサイクル(需要)、新燃料車(ビジネスチャンス)...etc
  2. 鉄鉱石など資源価格、人件費...etc
  3. リコール、自然災害...etc
  4. トヨタのダイハツ子会社化...etc
  5. JAMA...etc

 非常に簡単な例ですが、こんなものになります。特に売上に関してはでは大まかに述べましたが、例えば新車販売台数はもっと要因別に分けて分析することができます。人口の年齢構成、収入別の構成など様々な要因が新車販売台数を決めると思います。

企業の集めるべき情報
  1. IR情報...企業の業績見通し、中期経営計画、財務状況...etc
  2. ビジネスの基本状況...主要商品/サービス、主要生産ライン、主要顧客
  3. 新しいビジネスチャンス
  4. コスト...コスト増加/削減
  5. リスク...会社の持つリスク、製品を代替されるもしくは新規参入の脅威
  6. 設備投資
  7. M&A...過去のM&A

 企業の情報では、調査対象の企業だけではなく、競合との比較の上で会社を見ることが重要になります。特に、1, 2, 4に関しては競合との比較が極めて重要になります。

 ここで特に深く調べなくてはならないのが2番です。特に会社の製品/サービスにどのような強みがあり、マーケットシェアがどれくらいなのか、など深く調査しましょう。

情報収集のツール

 では最後にどうやってこれらの情報方法を手に入れたらいいかについて説明します。これはたとえ外資系のプロでも同じで、基本は「グーグル先生に聞く」です。そのほかにも、プロであれば企業訪問などがあるのですが、基本はやはり、グーグルです。グーグルはそれほど便利だということです。グーグルにいい情報がなければ、本などで情報を収集し、どうしても知りたいことはIRに聞くしかありません。まとめると以下のようになります。

  1. ネット検索...プロでもこれが基本です。証券会社のレポートや普通のウェブサイトから情報を収集しましょう。
  2. 本...ネット検索で十分な情報がないとき。
  3. IR...どうしても聞かなくてはならないことを聞くとき。

※ネット検索する際には、情報ソースがしっかりしているかをちゃんと確認しましょう。

  次に、個別企業の分析をする準備として、業界の分析をすることで調査の精度が大幅に上がります。以下のページで業界の分析の手法を紹介しています。

investall.hatenadiary.jp

≪前のページ