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ファンダメンタルズ分析への入口 ~市場での証券価格決定プロセス~



要約

  • 証券価格は市場のコンセンサス(=投資家の多くの納得)に基づいて価格がついている
  • ファンダメンタルズ分析の目標は市場のコンセンサスと違う点を見つけること

導入

 証券分析においての2大流派はファンダメンタルズ分析とテクニカル分析です。以前テクニカル分析について扱ったので、今回はファンダメンタルズ分析について書きます。

 ファンダメンタルズ分析では証券の発行体の経済状況を分析をします。今回は特に、個別株式(企業)のファンダメンタルズ分析をどのように行うかの解説をします。解説をするにあたり、Forbesで米国トップ3のセルサイドアナリストとしても選ばれたジェームズ・ヴァレンタイン氏の名著を参考にします。ファンダメンタルズ分析はテクニカル分析に比べ手間がかかりますが、ファンダメンタルズ分析を用いるとテクニカル分析より着実に、時に非常に大きな利益を得ることができます。

 今回は分析方法ではなく、事前準備として証券価格の決定プロセスについて説明します。

ファンダメンタルズ分析の目標

 ファンダメンタルズ分析においての目標は、”マーケットのコンセンサスとは違う独自の業績見通しを作ることで、証券の真の適正価格を予想すること"です。コンセンサスは金融市場になじみのない方には聞きなれない言葉だと思うので解説をします。

コンセンサスとは?市場での価格決定プロセス

 コンセンサスとは市場参加者(=投資家)が合意した見解(=価格)のことです。とは言ってもまだわかりづらいと思うので図で見てみましょう。下の図ではとある証券Aというものが存在し、投資家がそれぞれ証券Aの適正価格を考えている図です。

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 この図では投資家A,Bはそれぞれ700円、1,200円と考えているところ投資家C,Dを始め、他の大勢の投資家たちは900円と考えています。この状況では、大勢の投資家が証券Aの価格は900円で合意しているということになり、証券Aは900円と値段が付きます。なぜなら投資家A,B以外の投資家は900円が適正価格だと考えるため、これ以上安ければ買い、これ以上高ければ売りを出すからです。

 これは証券に限らず、日常品でも一緒です。例えば、ネギを使って考えてみましょう。みんなが「安い」と思う値段で、ある八百屋が売っていたらそのネギはすぐに売り切れるでしょう。すると八百屋はもうすこし値段を上げていいなと考え、値上げに出ます。するとみんなはそこではなく別の八百屋に行ってネギを買うでしょう。これを繰り返すと、その八百屋では大体みんなが「こんなもんやな」と思う値段に落ち着きます。また、人によって安いと思う基準が違うのも証券市場と同じところです。

コンセンサスと違う適正価格を出す

 説明したように、多くの投資家が適正だと考える価格に証券の価格は落ち着きます。そこで、市場価格と違う適正価格を算出するとどのようなことができるのでしょうか?

 先ほどの図を使って考えてみましょう。先ほど多くの投資家が900円と考えているところ1,200円だと考えている投資家Bがいました。つまり、この投資家Bは"マーケットのコンセンサスとは違う適正価格"を持っているわけです。そこで投資家Bは、証券Aが自分の適正価格より安いので、証券Aを購入します。その後投資家Bの考えたことが正しいことが実証されれば、コンセンサスも1,200円となり、投資家Bは300円分儲かります。

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 つまり、自分の考えていることが、ニュースや業績発表で正しいと実証されれば、事前に売り買いをしておくことで儲けることができるのです。しかし、市場の適正価格に異議を唱えることは簡単ではありません。なぜなら、上場証券は収益機会が大きく、多くの人が知恵、労力の全てを費やして分析しているからです。特に、時価総額5,000億円を超えるような大型株は難しいです。そのため、ファンダメンタルズ分析を進める上で、市場価格は原則正しく、なぜそのような価格がついているかは必ず考える必要があります。

  以下の記事からファンダメンタルズ分析自体の手法やポイントに関して説明します。

investall.hatenadiary.jp

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