要約
- ブル、べア、横ばいの3つのトレンドが存在
- 株価の底値になる支持線、株価の上値になる抵抗線が存在
- 株価の谷と山を結んだ線が支持線抵抗線になることも
導入
ダウ理論の記事でトレンドの説明を行いました。ダウ理論は現代において完璧ではなく、説明できない相場の流れがあることも紹介しました。今回は現代のテクニカル分析においてのトレンドについて説明したいと思います。
トレンドの3つの方向
現代におけるトレンドの定義は「株価の谷と山が続けて一つの方向に動くこと」です。実際に2016年前半の日経平均で見てみましょう。
このように株価の動きのピーク(山)と谷が一定の幅で横向きに続くことを横ばいトレンド(Sideways)と言います。また、株価がある幅(レンジ)に収まることからレンジ相場と言います。
また、ダウ理論でもあったようにブルトレンド、ベアトレンドでは株価の山と谷が上/下に動いていきます。つまり、現代では3つのトレンドがあり、それをまとめると以下のようになります。
- ブルトレンド...株価の山と谷が上昇を続ける
- ベアトレンド...株価の山と谷が下降を続ける
- 横ばいトレンド...株価の山と谷が言っての幅で横に続く
それぞれのトレンドを掴み、それぞれのトレンドに合わして買い/売り持ちを作ることで収益を上げることができます。一方で横ばいのトレンドに入った際は株価を追いかけず何もしないのが最善のことが多いです。なぜならほとんどのテクニカル分析の手法は持続的な上昇/下降トレンドを追いかけるために作られており、株価が頻繁に上下する横ばいのトレンドでは役に立たないからです。実際に2013-2016の日経平均で3つのトレンドを確認してみましょう
3つのトレンドの期間
ダウ理論と同じく、実務においては現代でもトレンドを3つの期間に区切っています。一部にはよりトレンドを分けている理論もありますが、実際には無限にトレンドの期間があるため、3つに限定して区切って使うのが現実的です。ダウ理論の記事でも紹介しているため、ここでは図だけの掲載にしておきます。
また、現代では中トレンドは主要トレンドの調整、小トレンドは中トレンドの調整とそれぞれ一つ上のトレンドの一部であると考えられています。また、実際に2015-2016年半ばのドル円で調整が行われていることを確認してみましょう。
若干期間が長いチャートであるため見えずらいですが、中トレンドも一方的に調整しているのではなく、もみ合って調整しているのはそこに小トレンドがあるからです。
支持線と抵抗線
支持線と抵抗線の形成について
先ほど、トレンドを決めるのは株価の山と谷だと説明しました。これらはトレンドにおける底値と上値を定義します。トレンドにおける底値を支持線といい、上値を抵抗線といいます。実際に2013-2015年の日経平均を使ってどういことか見てみましょう。
青色の線が支持線となり、黄色の線が抵抗線となります。今回は大きなところでのみ記録をとりましたが、実は毎回の上下動で支持線と抵抗線を形成しています。上の図を見ると、抵抗線が支持線に変わっていることがあります。これは、支持線/抵抗線はそれらが破られると、それぞれ次の抵抗線/支持線に成り代わる性質があるためです。
支持線と抵抗線の強さ
支持線と抵抗線にはそれぞれ強さがあります。例えば、弱い抵抗線ならば上に突き抜かれやすく、強ければそうはいきません。これを見極めるには3つの方法があります。
- 支持線/抵抗線の形成期間...支持線/抵抗線の形成にかかった時間が長ければ長いほど強くなります
- 支持線/抵抗線の形成に使われた出来高...支持線/抵抗線の形成に使われた出来高が多ければ多いほど強くなります
- 支持線/抵抗線の形成からの時間...支持線/抵抗線の形成が最近であればあるほど強くなります
実際には、3は新しいものが支持線/抵抗線として使われやすいというだけで、大切なのは、1,2です。1,2に関して、先ほどと同じ日経平均のチャートを使って解説したのが以下の図です。
支持線の形成にかかった期間、出来高が非常に大きくそう簡単に破られない支持線となっています。また、上の図では説明しませんでしたが、一番下の抵抗線も実はかなり大きい出来高を伴って形成されたため、この抵抗線を破るためにも更にかなり大きな出来高を伴っています。
支持線と抵抗線の破り方
支持線と抵抗線は破られた際にそれぞれ役割が入れ替わることを前編では言いました。しかし、破られるをどのように定義したらいいのでしょうか?以前、ダウ理論で述べたように、需給の歪みで株価が異常に動いてしまうときがあるといったようなケースではもちろん線を破ったことにはなりません。私は線を破る定義は下の2点を共に満たしたときのみと考えています。
- 株価が線を3%以上超えたとき
- 株価が線を超えるときに十分な出来高を伴ったとき...前回線を形成するのに必要だった出来高を十分に超えるとき
1番の条件はこれで大体通用しますが、2番に関しては一概には言えません。なぜなら線の形成期間により異なるからです。通常20%-30%増えていれば線を破れませんが、線の強さによります。また、条件ではありませんが、終値で線を超えていると、線を破っている可能性は上がります。では、2つの条件を2013年-2015年の日経平均に適応してみましょう。
赤がトレンドを変えることがトレンドを変えることに失敗した点で、青が成功した点です。今回、失敗した際はいずれも出来高が足りません。上向きの青の矢印では大きな出来高を伴い、勢いよく支持線を破っています。一方下向きの2つの青の矢印では出来高が足りず、押し負けると思いきや、その後抵抗線まで下げたところで出来高を増やし,
抵抗線線を破りました。
また、黄色で引いた2本の線が今回支持線/抵抗線になっているのですが、実はこれはほぼ14000円と15000円に一致するのです。
キリのいい数が支持線/抵抗線になる
嘘のような話ですが、実際にキリのいい数字は支持線/抵抗線になることが多いです。実証は先ほど済んでいるためよいとしましょう。特に、10,100,1000の倍数は強い抵抗線/支持線になることが多いです。(FXの場合は1円ごとにもなります。)
具体的には、日経平均ならば100,1,000の倍数、FXなら1,10の倍数が線となることが多いです。しばしば、日経平均では100の線の上下25円以内、FXでは1の線の上下0.25円以内で動きすぎることは頭に入れておくと得することがあるかもしれません。
もう一つの支持線/抵抗線(トレンドライン)
今まで、横軸に平行な線を扱ってきましたが、平行ではない線もあります。それは、株価の山もしくは谷を2つ以上結んでできるトレンドラインと呼ばれる線です。トレンドラインを用いることでより株価を正確に追うことができます。まずは例を見てみましょう。
上が2011年から2016年にかけての日経平均にトレンドラインを引いてみた図です。赤い線が抵抗線、青い線が支持線になっています。
まず、トレンドラインの性質について説明します。トレンドラインの角度は45°を基準に、これより急であれば急であるほどトレンドが強いことを示します。角度で分けてみると以下のような性質を持ちます。
- 45°より大幅に急なトレンドライン...トレンドとして強すぎ、長くは持続せず、持続可能な角度(45°前後)になるよう調整されると考えられる
- 45°前後のトレンドライン...主要トレンドの線である可能性が高く、長く持続しうる
- 45°より大幅に平らなトレンドライン...トレンドとしては弱く、逆転する可能性がある
実際にこの通りになっています。青の線がブルの主要トレンドラインを表しています。①の線では急激すぎ、②のトレンドに変わり調整しています。その後、②の線を割り、主要トレンドの線も割ることでトレンドの逆転が起きました。今後、中期的には③の線を抵抗線として動くと考えられますが、最終的に④の線の主要ベアトレンドとなる可能性が高いです。
トレンドラインを実際に引くときの問題
トレンドラインを実際に引こうと思うと出てくる唯一の問題は「引いたトレンドラインが正しいか否かは結果でしかわからない」ことです。なぜなら、将来の株価を予測するにあたり2つの山ないし谷を結んで線を引くのですが、3つ目の山もしくは谷が結ばれて初めてトレンドラインと認められるからです。実際に中編で扱った日経平均のトレンドラインを見てみましょう。
この図で問題となるのは果たして③の線は実際にトレンドラインになりうるのかということです。正解は不明ですが、少なからず言えるのは、先行きが明るくなると思えない場合③の線まで株価が上がれば売る方がいいと考えられるということです。
ちなみに④の線は既に成立しています。というのも、実はこの線は45°を目指して引くとどうなるかと引いてみた結果だからです。このように45°になるよう逆算して、線を引くことは早期にトレンドラインを見極めるコツの1つです。果たしてこの線が最終的に支持線と抵抗線のいずれになるのかという問題はありますが、トレンドラインとして使われることはほぼ間違えないと思います。(予想として書いておきますと、14,000円までは支持線として用いられるでしょうが、14,000を割ることがあれば抵抗線になるでしょう)
正しいトレンドラインを引くコツ
トレンドラインの問題を把握したところで、正しいトレンドラインを引くコツを列挙します。
- 疑わしい線は仮線として残しておく...最初から正しい線を引くのは難しいので仮線として残すことをお勧めします
- 高値、安値を使って引く...始値、終値ではなく、高値安値を使って引くようにしてください
- 他の支持線/抵抗線と不整合がないように引く...横軸と平行な線や他のトレンドラインとの整合性を考えましょう
- 線を超えてしまう小さい値動きは無視する...トレンドラインを少し超えてしまうことは頻繁にあるため気にしないで起きましょう
- 平行な線が1本以上出るように引く...株価は通常ある幅(レンジ)の中で動くため、1対の平行な線が見当たれば、その1対は正しい線である可能性が高いです。
実はレンジが狭まるタイプや広がるタイプの値動きがあるため5番のような線が引けないこともあるのですが引けた場合は正しい線である可能性が高くなります。
ここまでが基本的なチャートを使ったテクニカル分析の仕方です。きちんと分析できればこれだけでも十分に成果をあげられます。
より応用的なチャートを使った分析、移動平均を使った分析について知りたい方はこちらのページで。
※ここまでで扱わなかったテクニカル分析は、一層以下の注意事項に気を付けながら使う必要があります。特に数値を使ったテクニカル分析は人間が使うより、パソコン、いわゆるアルゴリズムトレード向きです。
テクニカル分析を行う上での最大の注意事項
テクニカル分析は純粋に過去の取引状況のみから株価などの値動きを予想する手法です。しかし、忘れてはいけないのは株価、FX、先物等は現実世界の経済状況の見通しを反映しているということです。現実世界の経済状況の見通しに反した動きは長続きしません。そのため、テクニカル分析だけに頼って値動きを予測するのではなく、経済の見通し、ニュースの出方を見つつ値動きを予想することが投資成功の秘訣です。テクニカル分析は市況による値段とタイミングを決めるためだけのツールであることを忘れず、使いましょう。
また、経済見通しやニュースによってどのように株価が動くのかを知らない方は以下の記事を参考にしてみてください。(FXなどにもある程度応用可能です。)