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証券会社をどう使えばいいかわからない方に伝えたい証券会社のビジネス解説



要約

  • 証券会社の提供するサービスは1.取引仲介 2.情報提供
  • 取引仲介は取引手数料、取り扱い商品幅で差別化されている
  • 情報提供は情報の幅と質で差別化
  • 証券会社はあくまで取引手数料があって初めて成り立つ商売であり、証券会社のレポートは売買を促す意味もあるため、自分で証券の分析をすることが重要

導入

 証券への投資を始める際に、多くの証券会社からどこを選ぶか悩むところだと思います。本記事では、証券会社のビジネスモデルを踏まえて解説することで、自分の基準持って証券会社を選べるようになるコツを紹介します。

証券会社のビジネス

 証券会社が関わる2つの金融市場

 金融商品市場には2種類あります。そのため、証券会社は会社によりますが、以下の2つの市場形成をビジネスとして担っています。

  1. 発行市場...証券(株、債券)を発行したい発行体のために証券を証券会社が発行(引受)する市場
  2. 流通市場...発行された証券が売買される市場(東証、NYSE...etc)

 このうち、投資家が関わるのは流通市場で、流通市場で取引をするにあたり投資家は証券会社にお世話になります。ちなみに、発行市場では企業、自治体が証券会社にお世話になります。

証券会社が稼ぐためにあなたにしてくれること

 流通市場での仕組みを図にまとめました。

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 この図からわかる通り、証券会社は個人投資家、機関投資家に関わらず、取引仲介をコアのビジネスとしています。個人投資家の取引仲介に当たり、証券会社の差別化のポイントが2つあります。1つ目は取引手数料、2つ目は仲介可能な商品種類です。取引手数料は近年大きな差がなくなってきつつありますが、仲介可能商品は会社によって異なります。上場証券では大きな差がありませんが、投信やコモディティやオルタナティブの取り扱いには各社差があります。

 しかし、どの会社も取引手数料、上場されている証券に限れば仲介可能商品は似たり寄ったりで大きな差はありません。そこで証券会社は注文仲介以外の点で差別化を図るのが証券会社による情報提供です。情報提供にはアナリストによるレポートに限らず、株式のスクリーニングがあります。扱っている情報の幅以外にも、大切なのは情報の質になります。手っ取り早く情報の質を見極める方法としてはアナリストランキングというものが存在します。個人投資家向けには日経ヴェリタスが公表しているものを参考にするとよいでしょう。

 まとめると、証券会社が手数料という売上をあげるためにあなたにしてくれるのは以下の2つです。

  1. 取引仲介...手数料と取り扱い商品がポイント
  2. 情報提供...情報の質と幅がポイント

証券会社の種類

 現在証券会社には大きく分けて2つの種類があります。それぞれの特徴を見てみましょう。

  1. ネット証券...オンラインでの注文のみを受け付ける証券会社。手数料が安く、情報提供力が限られる。SBI証券, 楽天証券, マネックス証券など。
  2. 店舗証券...営業担当者に対面、電話で相談しながら又はオンラインで注文を出せる証券会社。手数料がネット証券に比べ高いものの、情報の幅、質共に優れている。みずほ証券, 日興証券, 大和証券など。

 一般的には以上のことが言えます。ですが、ネット証券でも情報量を増やしている会社や、店舗証券でも手数料を下げていたり、個人向けに情報提供の幅を狭めている会社もあります。 本記事の主題からそれるため、具体的な各会社の比較は省略します。個人的には、扱いたい商品を扱っているネット証券を1つまたは2つ、それと管理に困らない程度に店舗証券の口座を開いておくことをお勧めします。

証券会社を情報を使う際の注意点

 先程、証券会社の提供してくれるサービスの1つが情報提供だといいました。この情報提供を通じて、各証券会社の顧客によりよい情報を伝えることで、顧客に得をしてもらおうとしています。

 しかし、あくまで証券会社は証券取引が成立して始めて稼げるビジネスで、顧客の儲かる儲からないは直接的に証券会社の売上に無関係です。そのため、証券会社が行う情報提供の裏の役割は取引成立を促すことなのです。

 実際には、世間が思っているほどは売買を促そうという思惑でアナリストがレポートの内容を意図的には改変していません。しかし、それでもアナリストの多くは過剰に強気(買い推奨であれば目標株価が高すぎ、売り推奨であれば目標株価が低すぎ)であることが多いため、市況が変化すれば大きく外れることが多々あります。そのため、証券会社のレポートを使う際には自分の分析も踏まえてることが重要です。

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