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株の値動きを掴むための2大基礎理論:テクニカル編



要約

  • テクニカル(=需給)のニュースによる株価変動は原則短期で収束
  • アノマリーと呼ばれる市場の動きの傾向が存在

導入

 前回のページではファンダメンタルズに関するニュースについて扱いました。今回は需給に関係するニュースについて扱います。

需給に関するニュース

 一般的に、需給はファンダメンタルズと対比してテクニカルと呼ばれます。テクニカル分析という言葉を聞いたことがある人もいると思います。このテクニカルも需給に関して、一般的にはチャートを使って分析する方法です。テクニカル分析に関するページはこちら

 需給に関するニュースとはつまり、誰かが大量に買う、売るというニュースです。その影響は、政府系金融機関の動きを除き原則1週間以内の短期間で終わります。そのため、まず誰が株式市場で実際に売り買いをしているのかということを知りましょう。

市場参加者の種類

 株式市場においての参加者は3種類に分かれます。

  1. 個人投資家...総額としては十分大きいですが、一人当たりの規模が小さいので、一人で相場を動かすことはありません。
  2. 機関投資家...これは基本的に資産運用会社を指します。引規模が個人に比べかなり大きいです。国内外ともに存在し、近年日本の株式市場では海外の機関投資家(特にヘッジファンド)が相場を動かすことも多いです。
  3. 政府系金融機関(日銀, GPIFなど)...資産規模、取引規模が格段に大きいです。国内外に存在しますが、基本は国内の日銀やGPIFの方が動きを予測しやすいです。

 以上のことからわかるように相場を動かすのは機関投資家と政府系金融機関になります。特に彼らは株価が上がる下がると関係なく売買をしなくてはいけないことがあり、主にこれらがテクニカルのニュースとして狙われます。

テクニカルのニュースの種類

 ある程度スケジューリングされたものもありますが、ファンダメンタルズのニュースよりは突発的に出てくることが多いです。また、ニュースとして出て来なくても、以下で紹介する動きを覚えておくこと短期投資では必須、中長期投資にも役立ちます。そのため、コンセンサスもないことが多いです。また、先程紹介した3種類の投資主体の動き以外に全体として今後の需給を予想させるものもあります。

  1. 政府系金融機関の資産購入発表...日銀のETF買い入れ額発表やGPIFのポートフォリオのリバランスが該当。このような大型投資家のことをクジラと呼びます。
  2. ファンドの分配/決算絡み...月/四半期末にあることが主で、ファンドの解約情報などが該当。
  3. 証券会社発表の注文動向...外資系証券の注文動向や昼のバスケット取引が該当。
  4. 空売り比率...日本証券取引所が発表する空売り比率が該当。
  5. 裁定買い残...証券会社が先物が現物に比べて高い時に先物売、現物買を行うことで発生。

 どのニュースでも買い/売りが多ければ株価上昇/下落を示します。空売り比率、裁定買い残のみ少し複雑なので解説します。

空売り比率

 空売り比率とは株の売却注文のうち、株式を保有してない人が株を借りて一旦売る、信用売り(空売り)を行っている割合です。毎日日本取引所グループが公開していますが、もちろん注文の結果なので株価が上下する前に比率を知ることは不可能です。これの見方は、比率が高くても低くても2パターンの見方があります。ここでは空売り比率が高い時の2つの見方を紹介します。

 空売り比率が高い場合、1. 今後株価が下がることを予見している人が多い 2. 売る人がほぼ売り切っているためこれ以上株価が下がらない と二つの見方ができます。どちらが正しいかは結果でしかわかりません。この情報を使う上で大事なのは、自分が持つ将来の株価に対する見方の自信度に応じて1,2のどちらの見方を取るか決めることです。この数値だけを頼りに取引するのはお勧めしません。例えば、もう下がりすぎており、今後下がることは考えられないと自信があれば、2として見て思いっきり買いを入れるができます。自信がなければ、危険とみなし取引をしないのが無難でしょう。

 また、どの水準であれば高い、低いというのは一概に言えません。直近1週間または1カ月、長くても2カ月くらいの間がどの水準であったか自ら確認するとよいです。実際に2016年5月-8月の動きで見てみましょう。

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 空売り比率が下がり株価が上がったのが緑の円で、空売り比率が上がり株価が下がったのが赤の円です。実際に相関していることがわかると思います。

裁定買い残

 これは先ほど紹介したように、証券会社がどれだけ株を買い持ちとして持っているかです。これは、毎週末の発表になります簡単に言えば持っている爆弾の大きさで、何かあったときに裁定買い残が多いと高い売り圧力が市場にかかることになります。なぜ裁定買いが発生するかといえば、先物が現物の株価を動かすからです。なぜなら通常、先物の動きを見て、証券会社がそれに合わせ現物を売り買いすることで現物が動くからです。

 実際に例を見てみましょう。それ裁定買いが減る前の出来高に比べて裁定買い残の大きさが大きければ株価の下げがきつくなります。つまり、出来高が大きくて裁定買い残が小さければ大きな影響になりませんが、出来高が小さいところで裁定買い残が大きいと下げがきつくなります。

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アノマリー

 アノマリーとは理論だった理由はないもの、発生確率の高い証券価格変動のパターンです。覚えておけば得することもあるかと思い、代表的なものをいくつか紹介します。ただし、可能性が高いだけで、必ずしも当てはまらないことを理解しておいてください。

  1. 週末/連休前...市場が1日以上閉まる前日ではリスクオフに動きやすく、売り注文が増えることがあることです。不安になる要素がなければ、そこまで大きな動きにはなりません。
  2. SQ(特別清算指数)算出絡み...SQとはデリバティブの決済に使われる株価です。そのため、第二金曜日にデリバティブの清算を行う(SQ算出)ことに伴いその週は株価の動きが激しくなりがちなことが多いです。特に3の倍数月は先物、オプションの両方のSQ算出になるため動きが特に激しくなります。特に言われるのはSQがある週の水曜日は売り圧力が強くなるというものです。
  3. セルインメイ...5月半ばに売っておくこと。米国で特に言われています。これは5月まで株価が上昇続きであれば5月に売っておくのがいいというです。理由は諸説ありますが、欧米カレンダーで6月から9月まで夏休みでリスクを取る投資家が減ることが原因ではないでしょうか。セルインメイの続きに9月半ばに買えというフレーズがあるのですが、これはその時点で不安要素なければです。

 以上が主たるアノマリーの例です。これだけを理由に取引をするとギャンブルになるので、他にも理由がある際に合わせて使う程度が無難です。

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