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図で分かる金融商品解説:Part 2 株式編



要約

  • 株式への投資は会社の経営権の一部を購入すること
  • 株式はリスク資産と呼ばれ、債券よりリスクが高い
  • 元本の返済がない代わりに、会社の利益はすべて株式に分配される

導入

 前回記事の債券の紹介に続き、今回は二番目に市場規模の大きい株式の紹介になります。前回の記事はこちらから。

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株式(Equity, エクイティ)

株式の仕組み

 株式は債券に次いで大きい市場ですが、ただお金を貸す債券とは性質が大きく異なります。一般的に株式はリスク資産と呼ばれ、債券に比べ高いリスクを持っています。まずは、どのような仕組みなのかを以下の図で見てみましょう。

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 まずは債券と同じところから説明します。基本的に投資家が、発行体(企業)に株式を通じて資金を提供するところは同じです。つまり、株式が金銭の提供証明書のようなものになります。また、債券でいうところの格付けは証券会社のアナリストによるレーティングになります。通常、レポートの形で適正株価の提示とともにレーティングを示します。多くは「買い」、「中立」、「売り」の3評価に分かれますが、各社によって基準、分け方が異なります。しかし、債券に比べ銘柄数が多いためレーティングがつかない銘柄も多数あります。どこでレーティングを見れるかはこちらの記事で。

 

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 次に、債券と違うところをまずリストとして挙げます。

  1. 投資をするとお金を貸すのではなく、会社の経営権を購入している
  2. 会社の利益がすべて株主に還元される(配当及び評価益にて)
  3. 株価や多様な指標を見て取引を行う
投資をするとお金を貸すのではなく、会社の経営権を購入している

 債券では社債を購入しても、単純に企業にお金を貸しているだけでした。しかし、通常、株を購入すると会社の経営権を購入することになります。そのため、あくまで売買なので借金は発生せず、元本返済義務もありません。そのため、理論上、投資したお金が0になることもあるためリスクが高いと言われています。とはいえ上場廃止や倒産などが起きなければそのようなことはないです。ちなみに倒産の場合は債券ですらお金が返ってくるか怪しいです。

 では、経営権を購入するとはどういうことでしょうか?端的に言えば、株主総会における議決権を得るということです。株主総会では役員の選任が主に行われます。役員は会社の経営を握るため、間接的に会社の経営を決めることができるのです。ちなみに、個人レベルでは滅多にないと思いますが、保有株数が相当に多いと拒否権など、より経営に対し強い発言力を持つことができます。実際、個人にとって議決権の有無は大したことではないかもしれませんが、株を購入する=会社(の事業)を買っているという認識を持ちましょう。

会社の利益がすべて株主に還元される(配当及び評価益にて)

 債券は購入した時にいくらの元本で、いくら利子がいくら払われるか決まっています。株の場合は、会社の利益(=売上-操業コスト)の全てが"評価益"もしくは"配当"の形で分配されます。つまり、いくら収益が上がるか決まってないため、予想より多くも、少なくも収益を得るということです。ちなみに、倒産をしないケースで株を持っている人にとっての最悪のケースは、社債保有者へ社債の償還や利子払い、株主に分配する利益がなくなることです。こうなるのは、会社の支払い優先順位は社債>株式となっているからです。次に用語の説明です。

 配当とは毎年決められた回数、株主に現金として支払われるお金です。また、株価に対し年間払われる予想配当額を配当利回りと呼びます。評価益(キャピタルゲイン)とは端的に言えば株の価値が上がることです。これによって、実際に儲かるのは株を売却した時ですが、配当よりも多く儲かることが多いため、株の投資ではキャピタルゲインを狙う投資家が主です。

株価や様々な指標見て取引を行う

 当たり前のことのようですが、債券の場合は利回りを比べて投資を行うことを推奨しました。(短期売買であれば債券価格を見て取引するのも良いですが。)なぜなら、債券価格と利回りが1対1で対応しているからです。

 ですが、株の場合、株の価格である株価を決定する要因は債券のように1つではないため、様々な指標を見なくてはなりません。配当利回りも1つの指標ですが、PER(Price-to-Earning ratio, 株価収益率)、PBR(Price-to-Book ratio, 株価純資産倍率)などの指標もあります。今回、株の価格決定について触れるのがメインではないので詳しいことはこちらのページで。

株式の種類

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 株式は1. 流通市場 と2. 株式の種別 で種類が分けられます。

流通市場

 まず、上場か非上場で大きく異なります。上場をしていれば流動性が高く、非上場の時に比べ株価が上がります。上場前に企業の株を持っていた役員が、上場したときにごっつ儲けたという話を聞くのはこれが理由です。

 そして市場にも種類があります。日本でも株式の場合、東証の1部, 2部, マザーズ...etcといろいろあります。また、海外にもニューヨーク, ロンドン, 香港...etcとあります。債券やほかの商品でも市場によって違い(主に通貨の違い)はありますが、株ではどの市場で取引されているかでリスク/リターンが大きく変わってきます。今回は主に個人投資家が取引をする東証1部、2部、マザーズについてのみ紹介します。

 東証1部は、東証の中で最も規模の大きい会社の株が取引される市場です。2016年7月31日の銘柄数は1,976*1と銘柄数も東証の中で最大で、流動性も一番高くなります。トヨタやソフトバンクなど聞きなれた大企業の株の多くはこの市場で取引されています。また、証券会社のアナリストのレーティング、レポートが発行されている会社が多く、とっつきやすい銘柄が多いです。

 一方、東証2部は1部に比べ、会社規模も小さい会社が集まっている市場です。流動性も1部に比べて低く、証券会社のアナリストのレポートも少ないです。かといっていい会社がないわけではなく、掘り出し物が見つかりやすい市場ともいえます。つまりハイリスクハイリターンの市場です。

 最後に、マザーズは若い企業の株が主に取引される市場です。そのため2部に比べても、更にハイリスクハイリターンの市場です。今回は紹介しませんが、新興企業向けとしてJASDAQという市場も日本にあります。

株式の種別

 主に3つあります。

 まず、普通株式は市場で取引されている通常の株式です。先ほど説明したような株式の特性を全て持ちます。

 次に、優先株式は普通株式に比べ"何か"が優先される代わりに、通常議決権を放棄した株式です。この”何か”は株により異なりますが、通常利益分配の優先度が高いことが多いです。つまり、配当が普通株式より高かったり、会社倒産時にいくらかお金が返ってくる確率が普通株式より高いです。

 最後に、ADR(American Depository Receipts, 米国預託証券)とはアメリカの市場で、アメリカ外の企業がアメリカに上場する際、株式そのものの代わりにアメリカの市場で流通させる証券です。日本の大企業もこの制度を使って米国市場に上場しており、ADRの動きが翌日の株価の動きを決めることもあります。

株式の比較法まとめ

  1. 発行体...どんな企業か
  2. 取引市場...東証1部, 2部...etc
  3. (レーティング...アナリストは売り、中立、買いのどれを推奨しているか)

以上3点が本記事において、株式を比較する際に見るポイントになります。実際には、先ほど述べたように株式の場合、様々な指標が存在します。

 実際に例を見ましょう。2016年8月10日現在のトヨタ自動車<7203>は1. 自動車業界 2. 東証1部/NYSEで上場 3.「買い」と「中立」半々といった具合です。ちなみに上場株式の全てに4桁のコード番号が存在し、これをコード/ティッカーと呼びます。プロ志向の方は銘柄名だけでなくティッカーも覚えとくと情報検索のとき、効率よく情報収集でます。なぜならティッカーは必ず一緒ですが、銘柄名は呼び方にばらつきがあるからです。また、個別株式をメディアで扱う際、ティッカーを記載するガイドラインが存在するため、ティッカーで検索すれば銘柄に関する情報が手に入ります。

 

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