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図でわかる金融商品解説:Part 1 債券編



投資の日の出投資の日の出要約

  • 債券は、デフォルトしなければ決まった収益が確実に入る低リスク商品
  • デフォルト確率は格付け会社によって調査されている
  • 債券は発行体、年限によって種類がある

導入

 投資で最も一般的なのは金融商品への投資です。とはいっても、金融商品ってどんなものがあるのか、そもそも各金融商品はどのようなものかわからない方もいると思います。そこで、金融商品を種類別に解説します。各商品の基本的な仕組みを理解してしまえば、今まで触れたことのない商品でも投資がしやすくなると思います。

 全3記事で四種類の商品群を紹介します。今回Part 1 では伝統資産と呼ばれる、債券の解説をします。(ちなみにこれらの商品はいわゆる直接金融のシステムの一部です。)

金融商品の種類

 まず、金融商品の種類について説明します。大きく分けて、以下の図のように4種類に分けられます。また、この金融商品の各区分をアセットクラスと呼びます。動物で言えば、哺乳類、鳥類、、etcのようなものです。

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 各商品の市場規模も概ねこのピラミッドの順になっており、債券が最大の市場となっています。それではピラミッドを下から順に追ってみましょう。

 どの商品も金融をするための商品であるため、資金調達をしたい人と投資家を結ぶ商品であるという点に注目しながら説明を読むと理解しやすいと思います。

債券(Fixed-Income, フィックスドインカム)

債券の仕組み

 債券は金融市場において最も市場規模が大きい商品群で、平たく言えばお金を貸した証明書のことです。原則借金であるため、元本返済義務(借りた金額は全額返さないといけない)があるのでリスクが低いとされています。また、購入した際にいくらの利子でいくら収益が上がるか定められています。仕組みは下の図のようになっています。

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 投資家が発行体(国、自治体、企業など)に債券を通じて資金を提供します。つまり、借金で言うと、債券発行体は借主(借金する人)、債券保有者は貸出人(お金を貸す人)となります。そして債券は金銭の貸し借りの証明書みたいなものです。また、債券の用語で借金の返済のことを、債券の償還といいます。また、返済ができない(しない)ことをデフォルトと呼びます。

 また、利子は債券によって異なります。一般に、期間が長ければ長いほど、リスク(=デフォルト可能性)が高いほど、利回りが高く、利子が多く付与されます。つまり、注意しなくてはならないのが利回りが高いからと言って、必ずしも得ではなく、デフォルトの可能性が高まることを理解しなくてはなりません。

 そもそも利子と金利に関しては以下のページで解説しています。

格付け

 もう一つ重要なのが格付けです。格付けとは、信用調査会社(格付け会社)が発行体、もしくは債券がデフォルトする可能性をどの程度持っているか調査し、ランク付けしたものです。格付け会社はそれぞれ格付けの定義を持っていますが、概ね全ての会社で以下の表のようになっています。

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 日本では主にJCR, R&I, S&P, ムーディーズの4社が現時点(2016年)で格付けを行っています。各社の詳しい格付け定義はこちらから。S&P, R&I, JCR, ムーディーズ

 上の図では書きませんでしたが、債券に担保がついている場合があります。債券に担保がついている場合、デフォルト時に担保を使って返済が行われます。そのため担保なしの債券に比べ、担保がある債券の方がリスク、利回りが低くなります。

債券の比較方法まとめ

 債券の仕組みが分かったところで、債券の比較をする場合に見るべきポイントは以下の5つです。

  1. 発行体...信用力が低い方が利回りが高い
  2. 年限(償還までの年数)...年限が長い方が利回りが高い
  3. 利回り...利回りが高ければリスクが高い
  4. 格付け...格付けが低い方が利回りが高い
  5. 通貨(債券の支払い通貨)

 実際には債券の販売は価格で行われていますが、利回りを見て投資することをお勧めします。なぜなら、債券価格と利回り(投資効率)は1対1の対応にあり、利回り同士で比較をする方が高い投資効率を実現できるからです。

 このように勧めるのは、個人投資家にとって債券は満期保有が前提の商品であるからです。株のように「いくらで買って、いくらで売ることで儲ける」というスタイルは個人投資家には流動性や投資効率の問題で困難です。債券の価格決定法を学ぶと、利回りと債券価格が1対1で対応していることが分かります。

  債券の基本的な仕組みについて理解したところで、実際の債券の種類に関して紹介します。

債券の種類

 では、債券の商品の中にどのようなものがあるか、以下の図を使いながら説明します。

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 まず、債券には大きく分けて2つの市場があります。それが短期資金市場と中長期資金市場です。文字通り、短期資金市場は短期(1年以下)の資金を調達する市場で、中長期資金市場は中長期(1年以上)の資金を調達する市場です。そしてそれぞれに何種類かの商品が存在します。

 まず、短期資金市場の中にどんな債券があるかを軽く見てみましょう。残念ながら個人投資家は、原則こちらの商品に投資ができません。個人向けの販売がないのです。コール、国庫短期証券(TDB)、コマーシャルペーパー(CP)とはそれぞれ、銀行、財務省、企業が資金調達をするための債券です。

 では、個人投資も可能な中長期資金市場の中にどんな債券があるか説明します。

国債

 国債は国が発行し、期間は2年以上のものがあります。国債は銀行の貸出金利などを決定することから、経済に最も大きな影響を与えるため、金融において最重要の市場でもあります。個人向けには個人向け国債として販売されています。

 また、国家が発行する債券であることから、最もリスクの低い(=デフォルト確率が低い)債券として考えられています。そのため、特に10年物の国債(別名:長期国債)はリスクフリーレートと呼ばれ、金利の指標となっています。余談ですが、2016年頭に始まったマイナス金利政策は10年物の日本国債の金利がマイナスになっただけで、それより前に2年、5年の国債の金利はマイナスでした。また、国債自体にも種類があり、日本国債であれば財務省のサイトに説明が載っています。国債とは : 財務省

 地方債

 簡単に言えば、地方債は発行体が国ではなく、地方自治体の債券です。発行体が自治体のため、国債ほどはリスクが低くないですが、相当リスクの低い商品です。

 社債

 呼び方によってはクレジットとも呼ばれます。社債の発行体は企業になります。債券であるため、リスクが低めではあるものの、国債に比べるとリスクと利回りが高いです。また、社債は2種類あり、通常の社債と劣後債というものが存在します。劣後債は会社がデフォルトした際に、返済をする順番が通常の社債より後になる社債です

 実際に社債が国債より利回りが高いことを確認しましょう。2015年に発行されたソフトバンクグループの7年物の社債は2.13%*1の利回りです。この時の長期国債先物(先物の説明は後ほどします)の利回りは0.31%*2程度なので1.8%利回りが高いことがわかります。ちなみに、社債の利回りは株価と逆に動くことが多く、株価が落ちれば社債利回りが上がり、株価が上がれば社債利回りが下がることが多いです。

 少し発展的ですが、7年物の社債と10年物の先物の利回りを比べるのはおかしい、と気づいた方はその通りです。通常は期間は同じもの、現物同士で比較するべきです。しかし、長期国債先物が残存7年の国債の利回りに連動して動くことからこのように比較します。

仕組み債

 仕組み債とは基本的には国債、地方債、社債など先ほど述べた中長期の債券に"なにか"がくっついているものです。この"なにか"は商品によって異なりますが、原則デリバティブです。デリバティブを使い、通常の債券になんらかのリスクを乗せることで高い利回りを実現しています。リスクの度合いは個々の商品によって違うため、仕組み債を購入する際は「何のリスクを取るのか?」、「どの程度のリスクがあるのか?」の二点に注意する必要があります。

その他の債券

 今回は紹介した分類で、ほとんどの個人向けの債券は分類できると思います。上記で扱わなかった債券で代表的なものでは、MBSやABSなど担保付きの債券があります。どちらも発行体が担保所有者で、彼らがデフォルトした場合に担保の売却などによってできる限り返済される債券です。

おまけ:円債と外債とは

 外国債券を略して外債と呼びます。そもそも外国債券とは何かというと、発行体、通貨、流通市場のいずれかが外国のものであれば、外債となります。極端な話、トヨタがドルで債券を国内向けに発行しても外債です。

 一方、円建ての債券を総じて円債と呼びます。つまり、海外の発行体が円建てで債券を発行すれば円債となります。発行体が海外であれば"ショーグン債"などと円債の中でもいくつか種類があります。名前で早とちりしないように気を付けましょう。

 ちなみに、円債、外債という区分以外にもフロー、ノンフローという区分もあります。フローは市場で流れている債券で、ノンフローは市場で流れてない債券(主に仕組み債)を指します。

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